2024年11月1日金曜日

第35回 映画好きを喜ばせる男、黒沢清の最新作2本をレビューの巻。前半『Cloud』篇。

 こんにちは!
前回のブログから、もう二ヵ月が経っていました。我ながら唖然茫然。
締め切りがないというのは、恐ろしいものです。
おかげで本ブログが生きているのか死んでいるのか分からない、ゾンビのような存在と化していますね……。すみません。
加えてここ最近の内容ときたら、生存報告だとか趣味の話ばかりで、映画の話をロクにしちょらんかった!(前回は一挙レビューという形)
ブログのアイデンティティ~ッ!

なのでっ! 今回は新作をレビューしちゃうっ!
内容はっ! 今年2024年に3本もの新作を放った黒沢清監督の2本をご紹介っ!
『CURE』(1997)『トウキョウソナタ』(2008)『スパイの妻』(2020)など、マイナーなホラーから最近はメジャー大作も手掛ける黒沢監督。どんな規模であろうと「清節(きよしぶし)」を忘れずに観客をゾクゾク&ニコニコさせる、エラ~イ監督さんです。
先ず紹介する1本目は、菅田将暉と初タッグで臨んだアクションスリラーだっ!


『Cloud』(2024年 監督・脚本:黒沢清 主演:菅田将暉)
転売行為で荒稼ぎをしている男、「ラーテル」こと吉井(演:菅田将暉)の身に起こる、不審な出来事の数々。
それは、吉井の事を恨み、正体を突き止めんとする人物たちの暗躍であった……。

より良い生活のために転売にのめり込んでいく吉井の姿は、一緒にいる恋人の秋子(演:古川琴音)含めて皮肉たっぷりに描かれてます。物を買い占め、それをドカッと売りさばき、買ってもらう事で自身が世界を動かしていると錯覚している男と、それに引っ付いておこぼれを頂かんとする女。現代らしい、イヤ~な縮図ですね。
そんな彼らの周りで起こる数々の出来事は、不気味な描写ばかり。この辺りは黒沢清の真骨頂でしょう。吉井だけでなく、僕たち観客もしっかり怖がらせてくれます。

が……後半。後半からは、ハッキリ言って別のジャンル映画に変貌します!
これを「映画」というハッタリ前提の娯楽における冗談だと思うか、はたまた「何だこりゃ、ふざけやがってる!」と怒るかは、あなた次第。
僕はあまりの変わりっぷりに、良い意味で笑うしかありませんでした。
「結局、○○したかっただけじゃん!」みたいな。
あまつさえ、1ショットだけ雪が降りだす始末。意図的にと言うよりは、そのシーン撮ったらたまたま降ってきた&効果的だから映しちゃえ! みたいな感じで。
黒沢さん、映画の神様に好かれまくってます。

そして黒沢映画と言えば、ロケ地。今回もまた素晴らしいロケーション(廃工場)を見つけてきています。
毎度毎度こんな面白い場所を見つけてくるなんて、黒沢さんはマニアなんでしょうか。
吉井たちが都会の喧騒から離れて暮らし始める湖畔の家もいい塩梅の静けさと不気味さをたたえています。若いカップルがあんな所で暮らし始めると、住む側も地元側も気が気じゃなさそうですが。

最後に、無精ひげを生やして転売ヤーを演じている菅田将暉も良いのですが、本作は周りの役者も良い顔ばかり。転売票の先輩・村岡(演:窪田正孝)、吉井が表向き勤務をしているクリーニング工場の社長・滝本(演:荒川良々)、吉井を逆恨みする青年・三宅(演:岡本天音)、吉井粛清グループの男・矢部(演:吉岡睦雄)、そして恋人だから、という理由以上に神出鬼没な存在である秋子。
みんなどこか不気味で、かつ存在感がある。顔の系統が似ているのか、窪田正孝と岡本天音をゴッチャに観てしまったのは、ここだけの話です。
名前はよく見かけるけど意識して演技を見ていなかった人たちばかり(古川琴音と荒川良々を除く)だったので、「良い役者じゃ~ん」と(エラソーに)思いながら観てました。吉岡睦雄さんの得体の知れなさなんて、フツーに怖いし。
なんとなくなんですけど、黒沢さんは魚顔の人が好みだったりするんでしょうかね。

と、長々と『Cloud』について書きました。スリラーとしてのツボも押さえつつ、清節(きよしぶし)も盛り込まれた、実にオイシイ映画となっております。
取っつきやすさもあるので、黒沢清に慣れていない方にもオススメの映画です!

※1本目のレビューが長くなったので、もう1本は次回にアップします。
もう1本は、より「ザ・黒沢清」印の、気持ち悪~い映画(誉め言葉)です。

黒沢清と言えば、カーテン。
イラストで描くのはムズイので、自宅のカーテンで真似事。

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