2018年12月30日日曜日

第16回 2018年を振り返ってみようベスト その1

皆さん、こんばんは!
今、このblogは大分県の実家で書いています。何故、実家なのか。それは年末だから。
そう。2018年も、もうすぐ終わってしまいます。
新しい環境に引っ越し(とは言っても以前の場所から車で10分ほど)、新しい職場で奮闘し、色々あったんだなぁと思わされる一年でした。
そんな2018年に観た映画たちの中で、どんな作品が心に残ったのでしょうか。思い出しながら、この文章を書いていこうと思います。

本当は2018年に公開された新作を対象とするのが普通なのでしょうが、となると俄然観た本数がガクッと減ってしまう無精者でして……
旧作のリバイバル(デジタルリマスター版など)も、範囲に含めます!
そして今回は、一つ一つの文章が長くなってしまう可能性大なので、2回に分けて投稿します。
あらすじも長くなること必至ですので、端折ります。

では、さっそく10位から振り返ってみましょう。
 10位 『ラスト・ワルツ』(1978 マーティン・スコセッシ)

公開40周年を記念してのデジタル・リマスター版という事で、「ラスト・ワルツ者」である僕は勿論観に行きました。
実は以前、吉祥寺バウスシアターが閉館する際に開催された「ラストバウス爆音上映」で、この映画もラインナップに入っていたのです。
しかし日程的に観る事が叶わず……(その時観た爆音映画は、デ・パルマの『ファントム・オブ・パラダイス』(1974)と石井聰亙の『シャッフル』(1981)『半分人間 アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン』(1985)でした。ロック!)
何年か後に、その時の雪辱を果たす事が出来ました。
ザ・バンドの解散コンサートを撮っただけの音楽ドキュメンタリー映画なのですが、この映画の持つ凄みはどうしたことでしょう。
アメリカに数多くいるバンドの内の一つが解散するというだけなのに、彼らの歌っている様子、そしてインタビューを観ていると、まるでアメリカの音楽の歴史に幕が閉じられたような……
我ながら大袈裟だなぁと思いつつも、本当にそう思ってしまいます。

とは言え、ザ・バンドよりも格好良いのはゲストで来ているジョニ・ミッチェルで、ザ・バンドよりもオイシイ役なのはトリを飾ったボブ・ディランだと毎度毎度思うのですが!


9位 『早春』(1971 イエジー・スコリモフスキ)

これまたリマスター版によるリバイバル上映です。
約10年前にWOWOWで録画したDVD-R(汚い画質で、しかもスタンダード・サイズ)を大事に持っていた僕ですから、勿論行きました。
鮮やかな画面のおかげで、まるで別の映画を観ているような、否、初見のような気持ちで楽しみました。
年上のお姉さんスージーを想う主人公マイクの心理は、同じ男としてよく分かります。
犯罪スレスレ(と言うか時々シャレにならない)の行為をしてしまうその純情すぎる純情!

恋は盲目!
スコリモフスキの映画の人物たちって、ホントいつも盲目です。
所々に映える鮮烈な赤が、本作の世界観に超現実感を生み出しており、この点においても、彼の持っている映画感覚というのは凄いなぁと惚れ惚れしてしまいます。
ちょっとしたスパイス(小道具、美術、視点の変化)を加えるだけで映画の世界観はグッと拡がるので、面白いものですね。

8位 『きみの鳥はうたえる』(2018 三宅唱)

佐藤泰志の小説はここ数年で何作か映画化となってきましたが、最も早く映画化された熊切和嘉監督の『海炭市叙景』(2010)を除いて何れも酷い映画化だな…… と観たのを後悔することしきりでした。そこにきて今回の『きみ鳥』です。
濱口監督と同じように、彼の以前の作品(『Playback』(2012)です)には世間の評判ほどノリきれなかった過去もあったため、今回はどうかなぁとだいぶ不安だったのですが、杞憂に終わりました。

予想に反して、良い青春映画でした。
映画らしく盛り上げるための妙な改変(これもハッキリ言ってお笑いですが)もなく、主人公たちが体験した、ずっと流れているかのような明るくも気怠い時間を上手く掴んでいたように思います。
メジャーな映画では初監督となる(はずの)三宅監督ですが気張っている様子もなく、実に自然体で撮られているように感じられました。
「現場の雰囲気が見える映画」と言ったら良いでしょうか。



7位 『スリー・ビルボード』(2017 マーティン・マクドナー)

何故これを観に行ったのかなと思い返すと、「評判が良かったから」とか「ウディ・ハレルソンが出てたから」とかしか思い出せないのですが、今さら理由はどうだっていいのです。観れたことが大事。
これも良かったです。アメリカの抱える悪、それに拮抗する善を真っ向から描いた映画で、演者の力演、それを逃すまいとするカメラががっぷりと組み合った、力作と言えるでしょう。
コーエン兄弟の『ファーゴ』(1996)の時は好きになれなかったフランシス・マクド―マンドですが、本作の彼女は良かったですねぇ!
しかし彼女以上に素晴らしかったのは、サム・ロックウェルでした。やる気無しの本当にダメな警官の典型なのかと思わせておいて、徐々に明かされていく彼なりの正義、信念…… この点においてはウディ・ハレルソンの役柄も同じなのですが、彼らの心情をきちんと追いかけていたのも、この映画が評価された要因の一つでしょう。
こういう映画を作れるところに、アメリカの懐の深さを感じてしまうのです……

6位 『なみのおと』(2011 酒井耕・濱口竜介)

震災直後に作られた、「東北記録映画三部作」の第一部です。

本作の存在自体は知っていたものの、「濱口監督のだし……」という今では信じられない理由で長いこと観ていなかった作品でした。
しかし、『寝ても覚めても』公開記念なのか、(京都の出町柳に昨年12月に出来た)出町座で、この東北三部作が特集されると言うので、観てきました。ビックリしました……

大袈裟な物言いですが、ドキュメンタリーの新しい、そして自分の思うドキュメンタリー映画の最も理想的な形だと思いました。
この映画の構成は簡単なものです。3.11の際に震災に遭われた方々を向かい合わせ、各々のその時の記憶を対話させるというスタイル。
したがって、この映画には津波で押し流される家々や、地震で崩れ去るビル群といった映像は一切流れません。
画面に映るのは、2011年の3月11日を思い出し、相手にその時の状況、心情を伝える2人の人間が映るだけ。
相手=スクリーンの向こうにいる観客に対し向けられる「伝える」という意識。
しかも「各々が相手の目を見て話しているんですよ」というのを示すために、劇映画のようにいちいち切り返しをしているんです!
ドキュメンタリーでそんな事をすれば絶対面倒くさいに決まっているのに、わざわざそれをするという大胆不敵さ、潔さ!
『寝ても覚めても』の時にも感じた「視線に対する律義さ」は、この東北三部作で磨いていったのかもしれません。

ところで…… 本作につきものの「津波」というキーワードは、僕の故郷である大分県にも、これから絶対に必要なキーワードになると思われます。
(南海トラフ地震の事です)
その事をより考えるためにも、そしてドキュメンタリー映画の新たな豊かさを再認識するためにも、これら「東北記録映画三部作」のDVD化、Blu-ray化を強く望むものです。




10位から6位を、ざっと振り返ってみました。
拙い感想になってしまい、我ながら恥ずかしいと言うか申し訳ないと言うか……
これを読んで「この映画、観てみようか」と思って下さる方がいたら、本当に有難い。
そんな反省しきりの僕ですが、明日は5位から1位を振り返りますよ!



イラスト:城間典子(映画館をテーマにしたイラストたちです。実はだいぶ前に描かれたイラストなのですが、今回使わせてもらう事となりました。)

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