こんにちは!
正月休み、どのようにお過ごしですか?
僕は実家に帰っていないため、ヒジョ~にダラダラとした時間を過ごしております。
こんなに年末年始感のない日々は初めてだったりします。
ま、そんな事は置いといて……
昨年も映画館以外で、色んな映画を観る事が出来ました。
それも、観たかった映画を沢山。
なので今回は、DVDやBlu-rayで観た映画たちの中で印象に残った作品をランキングします。
一応、初見の映画を並べますです。
さぁ、いってみましょう!
5位 『メイド・イン・L.A.』(1989 マイケル・マン)
マイケル・マンの代表作『ヒート』(1995)の元ネタとして長いこと気になっていたTV映画です。
観て驚き桃ノ木。
主人公刑事ヴィンセントの娘の件や強盗団の細かい人間模様などがシーンとして無いくらいで、あとはほぼ『ヒート』のまんまじゃまいか!
本編90分少々というTV映画だからこその尺となっており、上映時間がやたらと長いことで有名なマイケル・マン映画の中では相当に短い!
おかげでテンポ良く進み、一気に魅せてくれます。
『ヒート』では主役二人がアル・パチーノとロバート・デ・ニーロの激シブオヤジたちだったのに対し、こちらの2人は30歳くらいの若いキャスティングです。
二人とも若さゆえの自信の表れや野心を持っており、フレッシュな感覚に満ちています。
物語の流れは同じなのに、人物設定を少し変えるだけで物語の意味合いまで変わってくるものなんですね。
『ヒート』の名シーンとなっているコーヒーショップでの会話は、こちらでも良いシーンとなっています。
常に緊張感を漂わせている強面オヤジたちより、若い兄ちゃんたちが話しているからこそ
「一見穏やかそうに見えて互いの心の中では闘志が……」というのが際立っているような気がして、僕はこちらの方が好きだったりします。
そして『ヒート』と言えば、実銃を使ったという約10分に渡る伝説の大銃撃戦。
勿論、こちらにもあります。規模こそ小さいですが、こちらの銃撃戦もなかなかの迫力。
ヴィンセントが仲間を助けるため、敵の弾をくぐり抜けながら車のボンネットの上を転がり、着地して銃を撃ちまくるトコなんてカッコいいですよ~。
あと、ドアーズの「LAウーマン」をビリー・アイドルがカバーしているバージョンが本作のEDで流れるのですが、これも良いっ!
4位 『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー(ディレクターズ・カット版)』(1981 マイケル・マン)
我ながら「何度も観ているこの映画を入れるのはど~なんだ」と思うんですが、まぁディレクターズ・カット版(以下、DC版)なので勘弁してください。
大好きな本作のBlu-rayをつい先日手に入れまして、メインの劇場公開版だけじゃなく特典とし「4Kリマスター版本編」なるものがありまして、何だと思って観てみたらDC版だったのです。
ちなみに海外だと、マイケル・マン本人が公言しているのもあってか、DC版がメインだそうで。
というワケで、初めてDC版を観たんですよ。
な~るほど。
物語の流れに大きな違いはなく小さなシーンをチラッと足したりくらいなので、作品の補完の意味では確かにコレをオフィシャルとするのも納得です。
例えば…… OPのスタイリッシュなダイヤ強奪シーンから一転して、釣りをしている黒人のオッチャンと一緒に朝日が昇るのを主人公のジェームズ・カーンが見ているのですが、しみじみと良いシーンです。
こういう「物語に直接関係はないけど、入ることによって人物に膨らみが出るシーン」を、DC版では入れているのです。
が、劇場公開版と一番変わっていたのは、画面の色彩です。
彩度を抑え、黒を沈ませたその画面は公開版と比べると非常に陰影に富んだ、フィルム・ノワール的な面を強調した雰囲気になっています。
逆に公開版の方が、様々な明るめの色がしゃしゃり出ているように感じられるくらいです。
マン自身が監修したDC版は、長編映画デビュー作である本作をより普遍的な映画にしようとした執念のバージョンなのです……
3位 『夜の人々』(1948 ニコラス・レイ)
ニコラス・レイと言えば、ジェームズ・ディーンの『理由なき反抗』(1955)の監督で知られる方です。
そしてフィルム・ノワールや西部劇、歴史ものなど様々な映画を撮った職人監督でもあり、ヌーヴェル・ヴァーグの連中やヴィム・ヴェンダースに非常に尊敬された監督だったりします。
あと何と言っても、そのヴェンダースの『アメリカの友人』(1977)に出た時の強烈な存在感。
そんな彼の、デビュー作です。
フィルム・ノワール初期の名作として有名な映画であると同時に、フリッツ・ラングの『暗黒街の弾痕』(1937)と並んで、『勝手にしやがれ』(1959)『俺たちに明日はない』(1967)『地獄の逃避行』(1973)『ボウイ&キーチ』(1974)など多くの「男女逃亡もの映画」の元祖とも言うべき映画です。
こういった何かの元祖と呼ばれるものは、その歴史的価値のみにおいて評価される事がままあり、面白さを伴っているのかと言われると口を閉じたくなる場合が多かったりしますが、この映画はとても素晴らしいものでした。
映画は往々にして、作られた時代の流行だとか社会的な背景が映り込むものです。
しかしこの映画は、ボウイとキーチの男女二人の肉体的・精神的交流をひたすら追い続けます。
彼らの愛は、今観ても全然古びていません。
この映画が「永遠の処女作」と呼ばれる所以も、ここにあるのでしょう。
撮影も実験的かつ面白い試みをしています。
ボウイたちを乗せた車が走っているのを、ヘリによる空撮で捉えたオープニング場面。
それまでの映画にも、空撮による舞台の説明ショットはあったにせよ、本作のようにアクションの流れとしてのショットは、実はこの映画から始まったのだと言います。何と偉大な発明!
そして特筆すべきは、中盤の結婚式シーンでしょう。
いわれのない罪を背負って逃げる羽目になったボウイとキーチ。
愛し合っているのに心が休まらない二人は、ふと逃亡先で簡易結婚式場を見つけます。
気休めとは言え結婚しよう。
そう言って2人はささやかな結婚式を挙げるというシーン。
式場の前に立っている二人をカメラは後ろから撮っています。なので見えるのは二人の後ろ姿。
そこからカメラは動き出し、二人が式場の人と結婚の手続きをするのをずっと背中越しに見守っています。
まるでカメラが、二人の見届け人であるかのような撮り方です。
それを結構な時間を使って映しています。つまり長回しですね。
このようなカメラワークは、撮影時間の節約、物語の必要最小限の説明をしてくれると同時に、本作のテーマである「二人の行く末をただ見守るしかないという事」を、見事に画面の中で描いた描写と言えます。
しかも「ここぞ!」と言うべきところで長回しをしているため、現在のように長回しばかりで退屈だとかカメラの存在がチラつく事もありません。
やっぱり長回しは、使い方次第ですよね!
(誰に向けて言ってんだか)
まぁそんな事を抜きにしても、実に美しい映画でありました。
時おり観返してしみじみとしたくなる、大切な映画になりました。
2位 『キラー・エリート』(1975 サム・ペキンパー)
『ワイルドバンチ』(1969)や『ゲッタウェイ』(1972)『戦争のはらわた』(1977)など「バイオレンス・アクション映画の巨匠」であるサム・ペキンパー監督の中で珍作扱いされている本作。
やれ「カンフー映画ブームに便乗した」だの「忍者が出てきてオカシイ」だの「スパイアクションのなりそこない映画」等々、散々な言われようをあちこちで目にします。
加えて蓮實重彦を筆頭に、青山真治や黒沢清などいわゆる「そっち方面」の人々にえらく気に入られている映画でもありまして、それはそれで気になってしまう始末。
「気に入らんかもしれんけど、ペキンパーファンとしては一回くらい観てみたい」と思うのが人情じゃあないですか。
そんなこんなしていると、キングレコードからDVDとBlu-rayが出て、TSUTAYAでも気軽にレンタル出来るようになってしまいました。
早速レンタルして、どんなもんだとチェックしました。
結果…… わざわざBlu-rayを買ってしまいました。
気に入っちゃったんですよ、コレが!
我ながらビックリしました。
これが世に言う、ペキンパーの黒歴史『キラー・エリート』なのかと。普通に面白いじゃないかと。
普通、なんて言うのは良くないですね。とても面白いじゃないかと!
自分の中のペキンパー・ランキングに、結構な上位に来る作品です。
ペキンパー印のスローモーションは言わずもがなですが、男の友情と裏切り、癒しと死を象徴する水の存在も、きちんと入っている!
忍者やカンフーは物語上の刺身のツマみたいなもんで、そこばかり突くのは野暮だと言い切りましょう。爆薬を仕掛けるOPからして格好いい&ドキドキさせてくれるし、主人公であるジェームズ・カーンが守らなくてはならないアジアの要人が飛行機に乗ってやって来るシーンでの飛行機着陸シーンは、サスペンスの演出という点において、ひとつ前の映画『ガルシアの首』(1974)より明らかに上手くなっています。
そして親友でもあり今や敵となってしまったロバート・デュバルとの、反カタルシスな決着のつけ方……
確かにギクシャクした物語かもしれませんが、ペキンパーのニヒリズムに満ちた視点により「これは映画なのだよ」と開き直って観ることが出来ます。
すなわちこの映画は、オイシイ味つけをされたペキンパー流の冗談なのです。
冗談、と僕が受け取ってもいいくらいに、この映画は観客に対して開かれていると思います。
嘘だと思ったら、是非ともレンタルして観てみて下さい。
「こりゃ面白い!」となるか「くっだらねぇ代物だ!」と怒るかは、あなた次第ですが……
余談
『ワイルドバンチ』や『ゲッタウェイ』では「主人公たちの足を引っ張るダメな若者の役」として出ているボー・ホプキンスが、この『キラー・エリート』では非常に有能な銃使いの役で出てきます。
ペキンパー映画で一番評価されていない本作で、それまでと違う一番良い役で出てくるのは一体何の皮肉なんでしょう……
余談2
自分の中のペキンパー・ランキング。
1位 『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(1973)
2位 『ワイルドバンチ』(1969)
3位 『昼下りの決斗』(1962)
4位 『戦争のはらわた』(1977)
5位 『キラー・エリート』(1975)
次点 『ガルシアの首』(1974)
奇を衒っているワケではないんですが、こういうランキングになりましたとさ。
未だに観れていない『コンボイ』(1978)と遺作となった『バイオレント・サタデー』(1983)の「ペキンパー最晩年の二本」を、早いところ観たいものです。
1位 『愛欲の罠』(1973 大和屋竺)
ありとあらゆる映画の中で「死ぬまでに観たい映画ベスト1」だったのが、この桃色(要するにピンク)ハードボイルド映画『愛欲の罠』です。
監督の大和屋竺は、鈴木清順と若松孝二の弟子みたいな人で、『ルパン三世』などアニメの脚本家でも知られ、なおかつ日本映画の中で最もアバンギャルドなハードボイルド映画『荒野のダッチワイフ』(1967)を監督した人。
初期のルパン三世が好きで、『荒野の~』にゾッコン惚れ込んだ自分としては、何が何でも観たい映画でした。
それが去年の夏、東京に行く用事があって歌舞伎町のTSUTAYAで本作のレンタルDVDが置いてあり、信じられない気持ちのまま、すかさず借りました。
そして自宅で観た感想は…… 最高だぁ!
監督デビュー作の『裏切りの季節』(1966)と『荒野の~』はモノクロ、『毛の生えた拳銃』(1968)はパートカラー、そして最後の監督作である本作は初めて全編カラーで撮っています。
何と言ったらいいんでしょうか。映画を撮っていることが楽しくて仕方ないという気持ちが、ビンビン伝わってきます。
そして「これは映画という魔法であり、作り物であり、絵空事の結晶なのだ」と言わんばかりの大胆なハッタリのかまし方。
今まで自分が脚本、監督してきた「殺しのナンバー1を賭けて戦う男たちの世界」の集大成みたいな内容。
いや~、たまりません。
清順の『殺しの烙印』(1967)や若松孝二の『処女ゲバゲバ』(1969)長谷部安春の『野良猫ロック セックスハンター』(1970)松本俊夫の『ドグラ・マグラ』(1988)等々、脚本家として著名な人物にも関わらず、今回は同じ清順組の田中陽造が脚本を担当しています。
そのためでしょうか、清順がのちに手掛ける『ツィゴイネルワイゼン』(1980)『陽炎座』(1981)『夢二』(1991)の「浪漫三部作」に通じるものが、そこかしこに感じられます。
とまぁ色々置いといて…… 役者です。
主人公の殺し屋・星を演じるのは、荒戸源次郎。のちの映画プロデューサーであり映画監督である、あの人です。
阪本順治、豊田利晃、大森立嗣をメジャーにした人ですね。
この頃は劇団「天象儀館」なるものを率いており、『愛欲の罠』はその劇団による「第一回製作映画」となっています。二回目以降があったのかは知りません……
プロの役者ではないので、演技がヒジョーにロー・テンションです。
常にボソボソ喋り、セックスするシーンもやる気なさげ。
そんな全身ひねくれオーラをプンプンさせているのが、かえって役にハマっているんだから不思議です。
星の愛している女・眉子は「日活ロマンポルノ」を代表する女優、絵沢萠子です。
僕はこの人のムンムン熟女演技が正直言って苦手な方なのですが、本作における彼女は素晴らしいです。
こんなに魅力的だったのかと驚きました。撮り方が良いんでしょう。
とんでもなく綺麗に見える時が、ふとした瞬間あります。
他にも夢子役の安田のぞみとか港雄一&山本昌平の『荒野の~』コンビだとか色々言いたいのですが、やはり目玉はこの人らです。
殺し屋コンビのマリオと西郷を演じた、秋山ミチヲと神宮ガイラ。
神宮ガイラは単にガイラとも、小水ガイラとも様々な名前で呼ばれる人物ですが、小水一男としてピンク映画を数多く監督した人で、特に『処女のはらわた』『美女のはらわた』(ともに1986年)は、ピンク映画にスプラッター要素を持ち込んだという事で有名な映画です。
そんなガイラが演じた殺し屋西郷は、無口無表情の巨漢という「でくの坊とは正にこれ」といった風貌で、おっかない雰囲気満々。
しかし、西郷はまだ序の口。
問題は殺し屋のくせにマリオネットという設定のマリオこと、秋山ミチヲです。
秋山ミチヲ。
秋山道男と書いた方が有名かもしれないこの男は、若松孝二のピンク映画で歌を歌ったかと思えば出演したり、プロデューサーをしたり、あの『おでんくん』で「おでん屋のおじさん」の声をしていたりの人物なのです。あの妙に素人っぽい喋りは、そういう理由だったのです。
この映画のミチヲはマリオネットなので、全身そういう格好をしていて、ガイラ演ずる西郷に引っ張られながら行動します。
いっこく堂を思い浮かべてください。あんな感じで、マリオばかりがベラベラと喋ります。
まぁ不気味ったらないです。
大の大人がピエロもどきな恰好をして、ウヒャヒャと笑いながら人を殺したり女を犯す(ん?)のですから。
冗談抜きで、軽くトラウマになってしまいそうなインパクトを持っています。
初めてマリオの顔が映るシーンは、時どき夢に出てくるくらいシャレになりません。
それまでの空間が魔空間に変わってしまうほどに、マリオが出ているシーンは異質です。
ホントに、どうしたらこういう発想に至れるもんだと思います。
さすが、『ルパン三世』屈指の名編と言われる『魔術師と呼ばれた男』の脚本を書いた男です。
余談
そう言えば初期のルパンは「誰が裏世界を生きるのにふさわしいか」みたいな感じで、ナンバー1の座を巡って殺し合いばかりしてました。
『魔術師~』に登場するパイカルしかり、あの五ェ門しかり。
大和屋竺の世界観は、ルパン三世ともリンクしていたんですねぇ。
最後に。
『愛欲の罠』は映画史上最も律義な態度でもって終わります。これを律義ととるか悪ふざけの極みととるかは、あなた次第。
噂には聞いていましたが、ホントにずっこけました。いい意味で。
案の定『愛欲の罠』について結構書いてしまいました。
思い入れが強いと、その分書く量も多くなっちゃいますね。しゃーねーなー。
映画館でも『恐怖の報酬』(1977)を大画面で観る機会が二度もあったり『屋根裏のポムネンカ』(2009)を観れたりと、去年は本当に(自分の中の)幻の映画たちに出会えた一年でした。
ありがたや……
なお、今回のベスト5には入らなかったけれど面白かった映画たちも書き出します。
『裏切りの季節』(1966 大和屋竺)
『死の谷』(1949 ラオール・ウォルシュ)
『ブラック・エース』(1972 マイケル・リッチー)
『マーティン 呪われた吸血少年』(1977 ジョージ・A・ロメロ)
『Let The Right One In』(2008 トーマス・アルフレッドソン)
『裏切りの季節』は、大和屋監督のデビュー作です。
話は結構込み入った作りなんですが、奇怪なイメージが曼陀羅のようにドバドバと流れ出てきます。めまいを起こしてしまいそう。
極めつけは不気味な傘!
あんな凄い描写をデビュー作でやってのけてしまうんですから、やはり大和屋竺は恐ろしい人です。
『Let~』とは、『ぼくのエリ 200歳の少女』の原題です。あの邦題が本当に嫌いでして……。
映画自体は、最初に日本で公開された時からずっと心の片隅にある、大好きな映画です。
しかしご覧になった方は分かると思いますが、日本版はあるカットでボカシを入れてしまっているんですよ。作品の理解にとても重要なのにも関わらず。
なので僕は数ヶ月前に、無修正である海外盤Blu-rayを購入しました。
約10年の年月を経て、ようやくあるべき形の『Let~』に出会えました。Blu-rayだから画質も綺麗ですし……
といったベストでした!
次回は普通の映画レビューで、お会いしましょう!
2020年1月3日金曜日
2019年12月31日火曜日
第20回 ベスト10を作って2019年を振り返ろう。
皆さん、お久しぶりです。
このblog、とっくに忘れられていたと思われてた事でしょう。
なんせ最後の更新は4/30でしたから……
体たらく癖が思いっきり出てしまった……
すみません。
しかし、せめて一年を総括するベスト10だけは!
と、久々に投稿する次第です。
新旧問わず劇場で観た映画たちを、ランキングしていきます。
では早速、参りましょう!
10位 『バンブルビー』(2018 トラヴィス・ナイト)
マイケル・ベイ監督による実写トランスフォーマー・シリーズは実は1作目だけしか観ておらず、そんな自分が観ても良いのか……
と思いつつも「80年代の映画にオマージュを捧げている」「あの『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(2016)の監督が手掛ける初実写映画」という前情報を聞いた日にゃ「うん、観てみねば!」となりました。
結果は…… と~っても良く出来た娯楽大作でした。
主人公の成長っぷりとバンブルビーとの友情を上手いこと絡めており、なおかつベイの映画みたいに「画面の中で何が起きてるのかゴチャゴチャして分からん」という事もなく、とても観やすい映画でした。
スピルバーグ映画のように未知なるものとの接触を楽しく、かつドキドキするものとして描き、広々とした舞台に繰り広げられるドラマが、本作の爽やかさに見事にマッチしていました。
主人公たちがバンブルビーに乗ってドライブをする時、ティアーズ・フォー・フィアーズの「ルール・ザ・ワールド」が流れてくるというシーンが個人的にグッときましたねぇ。
80年代のヒット曲なので舞台設定が一発で分かるし、本作の雰囲気作りに一役買っていた選曲になっていたと思います。
9位 『羅小黒戦記』(2019 MTJJ)
京都市は出町柳にある映画館「出町座」で、とにかくプッシュされていた本作。
クリクリお目目の黒猫ちゃんが上の方を眺めているというポスターなので、可愛いなと思っても、一体どんな話なのか全然知らずに観たのです。
いやー、ぶったまげました。
可愛らしい妖精たちが沢山出てくるわ、可愛い見た目に反して凄まじいアクションシーンのつるべ打ちだわ、話の展開やキャラクターのデザインなど宮崎アニメみたいで親しみが持てるわで、「アニメのオイシイところ全部盛りだよ!」と言わんばかりのボリュームに大満足。
中国アニメのクオリティー、凄いですよ。これぞ一級の娯楽映画。
一部のミニシアターだけじゃなく、シネコンとかでバンバン上映して欲しいような映画です。
それだけ多くの人に観てもらいたい映画でした!
8位 『宝島』(2018 ギヨーム・ブラック)
『女っ気なし』(2011)『やさしい人』(2013)『7月の物語』(2017)などでフランス映画をささやかに元気にしている監督、ギヨーム・ブラックのバカンス映画です。バカンス映画って何ぞ?
これは「宝島」と称される大型のレジャー・アイランドをめぐる映画で、スタッフの会議やパトロール風景が映ったかと思えば、警備員の目を盗んで何とか園内に潜り込もうとする男の子たちの奮闘ぶりが映ったり、日向ぼっこしてるじいちゃんが語りだしたり、若者たちが橋の上から度胸試しのジャンプをしたりと「宝島」の中にいる人々の人間模様がパッチワークのように紡がれているのです。
映画を観ている間、カメラに映っている人々の振る舞いがあまりにも自然だったので「これってドキュメンタリー?」と感じていたのですが、それにしては様々な場所にカメラを置き、しかも被写体にカメラに映ることの抵抗感みたいなのがないな…… とも思いながら。
しかし。
この文章を書くために少し調べてみたところ、なんとカメラを160時間以上まわして膨大な素材を編集したものが、この『宝島』なんだそうで。
まごうことなきドキュメンタリー映画だったのです!
役者でもない一般の人々の自然な姿を、よくもまぁこんなに見事に切り取れたもんだと感心してしまいます。
単に皆が楽しんでいる姿ばかりでなく、遊びに来ている家族のお父さんがこれまでどんな境遇を過ごしてきた(この方は難民)とか、警備員のおじさんがこの「宝島」で働く事になった経緯など社会的な面もあって、この映画は非常に様々な顔を持っています。
早いところソフト化してもらって、時おり観返したい映画であります。
7位
『スパイダーマン:スパイダーバース』
(2018 ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン)
サム・ライミ版スパイダーマン(2002~2007)と『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)しかちゃんと観ていない体たらくな僕ですが、本作はとても楽しめました。こういう平行世界ものは、否応なしに燃えます。
これに近いものを思い返すと、現役ライダーを助けに来る先輩仮面ライダーたちとの共演回みたいなもんでしょうか。
(寄り道話。仮面ライダーたちの共演回は、先輩ライダーの声が違ってたりする事が多々あったにも関わらず、それでも結構燃えるのは何だったのでしょう。ウルトラマンたちは兄弟でよく集まってたってのもあるかな……)
映画こそ追いかけられてはいないものの、漫画の設定なんかはつまみ食いしているので、所々くすくす出来ました。生粋のスパイディ・ファンであれば、もっと楽しめたんでしょうが。
ところで本作は、庶民的なところから始まっているスパイダーマンを、もっと窓口を広くして観客に寄り添っている作品に見えました。
それすなわち、「誰でもヒーローになれるのだ」という事です。
スパイダーマンをスパイダーマンたらしめているのはクモ能力だけではなく、その力を授けられた人間が持つ勇気、責任。
そここそが、スパイダーマン、否、ヒーローに大事なことなのだと教えてくれます。
そして圧倒的な画面の密度、情報量!
とてもカラフルに彩られた超ポップなスパイディ・ワールド!
それを縦横無尽に飛び回る楽しさ、気持ちよさ!
これを大画面で観れたのは有難かった~。
ペニーちゃんも可愛かったしね!
(何のこっちゃと思う方は、是非とも本編を!)
6位 『屋根裏のポムネンカ』(2009 イジ―・バルタ)
高校生の頃、僕が初めて買った映画秘宝に本作を紹介している記事があり、ずっと観たかった映画でした。
上映の機会もそんなに無かったはずで、自分の中で幻の作品扱いだったのですが、京都みなみ会館でつい先日行われたチェコアニメ特集で遂に観ることが出来ました。
仲良く暮らしているポムネンカたちと悪の帝国との戦いが、とある家の屋根裏で行われるという話です。
いかにもお人形さんといった風情のポムネンカは可愛らしく、仲間たちもクマのぬいぐるみやマリオネット、ねんどの妖精など様々。
反対に悪の帝国のボスは銅像で、奇怪な虫や蛇のようにキョロキョロ動き回る目玉など、なかなかに不気味です。
しかしこの不気味さがチェコアニメの醍醐味といった感じで、たまりませんね。
本作は人形アニメで手作り感溢れており、むかし自分たちがおもちゃで遊んだときのような感覚を呼び起こしてくれます。
僕が観に行った時、2組ほど親子が来ていました。彼らは楽しんで観ていたようで、終わったとき「おもしろかったね」とお母さんに言っている女の子がいました。
映画って、いいもんですねぇ。
以上、10位から6位でした。
さぁ、続けて5位から1位だ!!
5位 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト』(1968 セルジオ・レオーネ)
タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)のタイトル元ネタであるためか、突然リバイバル上映された本作。「昔々西部で……」という詩情に満ちたこのタイトルも勿論好きですが、大作感をででん!
と突きつけてくる旧邦題の『ウエスタン』も嫌いじゃないです。と言うか好き。
……というワケで、大好きなレオーネ映画の中でも特に好きな本作をシネコンの大スクリーンで観れたのは、ホントに感無量でした。
オープニングで汽車がやって来るまでの緊張感!
ヘンリー・フォンダやジェイソン・ロバーズが出てくる時のオペラのような演出!
ラストのブロンソンのとんでもアップ!
おかげで165分はあっという間。
多くを語らず画面で魅せるこの映画、「映画が好きで良かったなぁ」としみじみ思わずにはいられません。
レオーネ監督が僕らに遺してくれた、素晴らしい贈り物です。
4位 『細い目』(2004 ヤスミン・アフマド)
監督の没後10周年という事で出町座が特集を組んでいたので、たまたま観た映画です。一気に監督のファンになってしまいました。
舞台はマレーシア。
マレー人の女の子オーキッドと、中華系(華人)の男の子ジェイソンが恋に落ちて……
というボーイ・ミーツ・ガールものです。
ジェイソンくんは路上で海賊版VCDを売っているようなヤクザ者なので、オーキッドちゃんと仲良くなるのも苦労が絶えません。
その上、中華系であるジェイソンくんは、彼女の周りの友だちから「細い目」と揶揄されて良い思いをされていません。
2人の家族は、そんな子供たちを受け入れ、何とかこの恋が実るように温かく見守るのですが……
とにかく優しさに満ち溢れた映画です。登場人物たちが他の人に向ける優しさ、監督が登場人物に向ける優しさ。
しかし優しいだけでは、甘いだけの映画になってしまいます。
アフマド監督が偉いのは、この世界は優しさだけではなく厳しさもあるのだと、きちんと掲示するところです。
ジェイソンくんが生きる裏世界の恐ろしさ。中華系だからと言う事でいわれのない悪口を言われてしまう民族間の溝。
そんな厳しさを何とか乗り越えて心を通じ合わせようとする主役2人の姿は、とても健気で美しいです。
この手の恋愛映画では侯孝賢の『恋恋風塵』(1987)が大好きなのですが、
この『細い目』もそれに匹敵するくらい好きな映画になりました。一緒に『タレンタイム 優しい歌』(2009)も観まして、こちらも傑作でした。
この人の映画は普遍的なものを持っていますね。
もう新作が観られないという事実は、あまりに残酷すぎます……
3位 『視覚障害』(1986 フレデリック・ワイズマン)
新作『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(2017)が公開されるタイミングに合わせてか、
京都・大阪・神戸の映画館たちでフレデリック・ワイズマンの大規模な特集上映が組まれました。
彼はドキュメンタリー映画史に多大な功績を残している人物にも関わらずほとんどDVD化されていないので、今回の上映は極めて有意義かつ貴重だったと思います。そんな中に観た一本。
本作は「聾・盲シリーズ」の一作目であり、この作品に続くものとして『聴覚障害』『適応と仕事』『多重障害』(いずれも1986年)があります。
今回僕は、本作と『聴覚障害』を観ることが出来ました。
アラバマ州立の総合養護施設の中にある盲学校が舞台で、施設の子供たちが勉強や訓練をする光景をナレーションやテロップによる説明なしで映していくという、いつものワイズマン流で魅せていきます。
テレビのドキュメンタリー番組の作りだとよく説明が入るワケですが、そうなると僕たち視聴者は「どこか別の話、特別な話」のように感じてしまいます。
ワイズマンは説明を省き、映したものを淡々と掲示する事によって、観客は映画の中に引き込まれていきます。
彼の映画の中に「入り込んでゆく」感覚に陥るのです。
ジョン・カサヴェテスの映画も、このタッチに非常に近いものを感じさせます。その秘密は何なのか……
テストの成績が良かったため下の階にいる先生に答案用紙を見せに行こうとする子供のシーンが序盤にあるのですが、ここが凄い。
おぼつかないながらも、壁や手すりに沿って廊下や階段を渡ってゆく少年。その模様をずーっとワンカットでカメラは追いかけます。
観客は少年の足取りに緊張しながらも、予想以上に器用に歩いてゆくその姿を見て「おおっ」とも思います。
この「緊張と驚き」は、カメラを回しっぱなしのワンカットだからこそ体感できるのでしょう。
編集の段階で所々切らずに丸々使う。
この大胆さこそが、「映画が持ちうる自由」なのだと思うのです。
2位 『ひいくんのあるく町』(2017 青柳拓)
出町座は先日2周年目に突入したのですが、この映画はオープンしたての頃から「公開予定」のリストに入っておりました。
今年の7月に一週間限定で上映され、一応気にはなっていたものの特に期待せずに観たのもあるかもしれませんが……
本当に素晴らしい映画でした。これが卒業制作で作られた映画と聞いた日にゃ、ビックリです!
物語は監督の故郷、山梨県市川大門の町並みを日々歩き回っている謎のおじさん、ひいくんを追いかけるところから始まります。
障がい者の自立施設に通っているひいくんは、空いている時間で町を歩き回り、みんなのお手伝いをしています。
なので町のみんなにとって、ひいくんは誰もが知っている有名人。
一方、青柳監督の伯父さんは、かつて電気店を営んでいました。が、脳出血を患い認知症も併発しリハビリ生活を送っています。
伯父さんはカメラが趣味で、ずっと市川大門の風景を撮影していました。
そこには、賑っていた町や幼いひいくんや監督の姿が映っていました。
過去と現在が、つながり始めたのです。
自分たちの住んでいる町は、かつての賑わいある町とは変わってきているけれど、ひいくんが歩くことで、おじさんが写真を撮ることで様々な人々の記憶に残り続けています。そしてその記憶が、人と人のつながりが、映画というマジックで一つになります。
特別何かがあるワケでもない町。
でも、そこに住んでいる小さな声に耳を傾けてみると、自分の知らない町の歴史が浮かび上がってくる。
ささやかな記憶だからこそ、映画となって映し出されるとき、そのかけがえのなさにグッときます。
映画って、こんな素敵な奇跡をも生み出してくれるんですね。
さぁ、2019年の岩佐悠毅的第1位は……
1位 『カーマイン・ストリート・ギター』(2018 ロン・マン)
今年の1位はコレです!
いや~、こんなに豊かな時間を過ごせた映画はなかったです。早くディスク欲しいっすね!
ニューヨーク州グリニッジ・ヴィレッジに、ニューヨークの建物の廃材を使ってギターを作るという
お店『カーマイン・ストリート・ギター』があります。
パソコンも携帯も持たないギター職人のリック、パンキッシュな装いの見習いシンディ、
そしてリックの母親の3人が、このギター・ショップの店員たち。
この風変わりかつ魅力的なお店には、様々なミュージシャンたちが訪れる……
黙々と作業するリック。出来たばかりの新作ギターをインスタに投稿するシンディ、掃除をしているお母さん。
映画の出だしからしてスローペース。
そしてカメラもどっしりと構えて、店内に漂う落ち着いた雰囲気を切り取っています。
ミュージシャンたちは店の評判を聞きつけてやって来ます。
リックと雑談したり、彼の作ったギターを弾いている時の彼らはとても幸せそう。
変わりゆく街並みに、変わらないお店と、その人々。
この映画は、そんな彼らのささやかな歴史を映した素敵な映画です。
まるでギター版『コーヒー&シガレッツ』(2003)のような味わいです。
そうそう、この映画はミュージシャンとしてジム・ジャームッシュ監督も登場します。
虫に食われた木の内部を見せて「脳みそみたいだろ」なんて談笑してましたよ。
というのが、今年のベスト10でした!
ドキュメンタリー多いな……
意識したワケではないんですが、感銘を受けた映画を並べるとこうなっちゃいました!
僕自身ビックリしています。
今回ベスト10には入らなかったものの、劇場で観て面白かった、良かった映画たちがまだあります。
10本一気にご紹介~。
『AK ドキュメント黒澤明』(1985 クリス・マルケル)
『きみと、波にのれたら』(2019 湯浅政明)
『恐怖の報酬』(1977 ウィリアム・フリードキン)
『グロリア』(1980 ジョン・カサヴェテス)
『COLD WAR あの歌、2つの心』(2018 パヴェウ・パヴリコフスキ)
『シシリアン・ゴースト・ストーリー』(2017 ファビオ・グラッサドニア、アントニオ・ピアッツァ)
『魂のゆくえ』(2018 ポール・シュレイダー)
『ノーザン・ソウル』(2014 エレイン・コンスタンティン)
『パンク侍、斬られて候』(2018 石井岳龍)
『グロリア』は自宅で何度観たか分からないくらい大好きな映画。
シネマ神戸という映画館で『恐怖の報酬』と2本立てだったので行ってきました。
大きな画面で何とも贅沢な2本立てをしてきました。
実は『バンブルビー』と『スパイダーバース』も、シネマ神戸さんで観てきたのです。
素晴らしい映画館で、すっかりファンになってしまいました。
『突撃!博多愚連隊』(1978)や『狂い咲きサンダーロード』(1980)の石井聰亙監督が、石井岳龍と改名してからはピンと来る映画がなくてイマイチだな……
と思っていたら『パンク侍』なるトンでもない爆弾をぶちかましていたんですね。これは快作でした!
『魂のゆくえ』は、いずれ本blogで取りあげたい映画です。色々と思うところありだったので。
さてさて。
『イエスタデイ』(2019 ダニー・ボイル)
『幸福路のチー』(2017 ソン・シンイン)
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(2019 片渕須直)
『象は静かに座っている』(2018 フー・ボー)
『ラストムービー』(1971 デニス・ホッパー)
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019 クエンティン・タランティーノ)
等々を来年に持ち越して、今年は終わりたいと思います。
これらを持ち越しちゃマズいだろってのは、本人が一番わかってるので突っ込まないこと。
それにしても……
久しぶりに映画の紹介記事を書くと自分で「ああ、なんか腕落ちてないかぁ?」なんて思ってしまいますね。
やはり継続は力なり。
続けることで書く腕も磨かれていくんですよね。
来年はもっと更新できるように頑張りますので、どうか見捨てないでやってくださいね……
それでは、来年もどうぞよろしくお願いします!
イラスト:城間典子
このblog、とっくに忘れられていたと思われてた事でしょう。
なんせ最後の更新は4/30でしたから……
体たらく癖が思いっきり出てしまった……
すみません。
しかし、せめて一年を総括するベスト10だけは!
と、久々に投稿する次第です。
新旧問わず劇場で観た映画たちを、ランキングしていきます。
では早速、参りましょう!
10位 『バンブルビー』(2018 トラヴィス・ナイト)
マイケル・ベイ監督による実写トランスフォーマー・シリーズは実は1作目だけしか観ておらず、そんな自分が観ても良いのか……
と思いつつも「80年代の映画にオマージュを捧げている」「あの『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(2016)の監督が手掛ける初実写映画」という前情報を聞いた日にゃ「うん、観てみねば!」となりました。
結果は…… と~っても良く出来た娯楽大作でした。
主人公の成長っぷりとバンブルビーとの友情を上手いこと絡めており、なおかつベイの映画みたいに「画面の中で何が起きてるのかゴチャゴチャして分からん」という事もなく、とても観やすい映画でした。
スピルバーグ映画のように未知なるものとの接触を楽しく、かつドキドキするものとして描き、広々とした舞台に繰り広げられるドラマが、本作の爽やかさに見事にマッチしていました。
主人公たちがバンブルビーに乗ってドライブをする時、ティアーズ・フォー・フィアーズの「ルール・ザ・ワールド」が流れてくるというシーンが個人的にグッときましたねぇ。
80年代のヒット曲なので舞台設定が一発で分かるし、本作の雰囲気作りに一役買っていた選曲になっていたと思います。
9位 『羅小黒戦記』(2019 MTJJ)
京都市は出町柳にある映画館「出町座」で、とにかくプッシュされていた本作。
クリクリお目目の黒猫ちゃんが上の方を眺めているというポスターなので、可愛いなと思っても、一体どんな話なのか全然知らずに観たのです。
いやー、ぶったまげました。
可愛らしい妖精たちが沢山出てくるわ、可愛い見た目に反して凄まじいアクションシーンのつるべ打ちだわ、話の展開やキャラクターのデザインなど宮崎アニメみたいで親しみが持てるわで、「アニメのオイシイところ全部盛りだよ!」と言わんばかりのボリュームに大満足。
中国アニメのクオリティー、凄いですよ。これぞ一級の娯楽映画。
一部のミニシアターだけじゃなく、シネコンとかでバンバン上映して欲しいような映画です。
それだけ多くの人に観てもらいたい映画でした!
8位 『宝島』(2018 ギヨーム・ブラック)
『女っ気なし』(2011)『やさしい人』(2013)『7月の物語』(2017)などでフランス映画をささやかに元気にしている監督、ギヨーム・ブラックのバカンス映画です。バカンス映画って何ぞ?
これは「宝島」と称される大型のレジャー・アイランドをめぐる映画で、スタッフの会議やパトロール風景が映ったかと思えば、警備員の目を盗んで何とか園内に潜り込もうとする男の子たちの奮闘ぶりが映ったり、日向ぼっこしてるじいちゃんが語りだしたり、若者たちが橋の上から度胸試しのジャンプをしたりと「宝島」の中にいる人々の人間模様がパッチワークのように紡がれているのです。
映画を観ている間、カメラに映っている人々の振る舞いがあまりにも自然だったので「これってドキュメンタリー?」と感じていたのですが、それにしては様々な場所にカメラを置き、しかも被写体にカメラに映ることの抵抗感みたいなのがないな…… とも思いながら。
しかし。
この文章を書くために少し調べてみたところ、なんとカメラを160時間以上まわして膨大な素材を編集したものが、この『宝島』なんだそうで。
まごうことなきドキュメンタリー映画だったのです!
役者でもない一般の人々の自然な姿を、よくもまぁこんなに見事に切り取れたもんだと感心してしまいます。
単に皆が楽しんでいる姿ばかりでなく、遊びに来ている家族のお父さんがこれまでどんな境遇を過ごしてきた(この方は難民)とか、警備員のおじさんがこの「宝島」で働く事になった経緯など社会的な面もあって、この映画は非常に様々な顔を持っています。
早いところソフト化してもらって、時おり観返したい映画であります。

7位
『スパイダーマン:スパイダーバース』
(2018 ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン)
サム・ライミ版スパイダーマン(2002~2007)と『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)しかちゃんと観ていない体たらくな僕ですが、本作はとても楽しめました。こういう平行世界ものは、否応なしに燃えます。
これに近いものを思い返すと、現役ライダーを助けに来る先輩仮面ライダーたちとの共演回みたいなもんでしょうか。
(寄り道話。仮面ライダーたちの共演回は、先輩ライダーの声が違ってたりする事が多々あったにも関わらず、それでも結構燃えるのは何だったのでしょう。ウルトラマンたちは兄弟でよく集まってたってのもあるかな……)
映画こそ追いかけられてはいないものの、漫画の設定なんかはつまみ食いしているので、所々くすくす出来ました。生粋のスパイディ・ファンであれば、もっと楽しめたんでしょうが。
ところで本作は、庶民的なところから始まっているスパイダーマンを、もっと窓口を広くして観客に寄り添っている作品に見えました。
それすなわち、「誰でもヒーローになれるのだ」という事です。
スパイダーマンをスパイダーマンたらしめているのはクモ能力だけではなく、その力を授けられた人間が持つ勇気、責任。
そここそが、スパイダーマン、否、ヒーローに大事なことなのだと教えてくれます。
そして圧倒的な画面の密度、情報量!
とてもカラフルに彩られた超ポップなスパイディ・ワールド!
それを縦横無尽に飛び回る楽しさ、気持ちよさ!
これを大画面で観れたのは有難かった~。
ペニーちゃんも可愛かったしね!
(何のこっちゃと思う方は、是非とも本編を!)
6位 『屋根裏のポムネンカ』(2009 イジ―・バルタ)
高校生の頃、僕が初めて買った映画秘宝に本作を紹介している記事があり、ずっと観たかった映画でした。
上映の機会もそんなに無かったはずで、自分の中で幻の作品扱いだったのですが、京都みなみ会館でつい先日行われたチェコアニメ特集で遂に観ることが出来ました。
仲良く暮らしているポムネンカたちと悪の帝国との戦いが、とある家の屋根裏で行われるという話です。
いかにもお人形さんといった風情のポムネンカは可愛らしく、仲間たちもクマのぬいぐるみやマリオネット、ねんどの妖精など様々。
反対に悪の帝国のボスは銅像で、奇怪な虫や蛇のようにキョロキョロ動き回る目玉など、なかなかに不気味です。
しかしこの不気味さがチェコアニメの醍醐味といった感じで、たまりませんね。
本作は人形アニメで手作り感溢れており、むかし自分たちがおもちゃで遊んだときのような感覚を呼び起こしてくれます。
僕が観に行った時、2組ほど親子が来ていました。彼らは楽しんで観ていたようで、終わったとき「おもしろかったね」とお母さんに言っている女の子がいました。
映画って、いいもんですねぇ。
以上、10位から6位でした。
さぁ、続けて5位から1位だ!!

5位 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト』(1968 セルジオ・レオーネ)
タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)のタイトル元ネタであるためか、突然リバイバル上映された本作。「昔々西部で……」という詩情に満ちたこのタイトルも勿論好きですが、大作感をででん!
と突きつけてくる旧邦題の『ウエスタン』も嫌いじゃないです。と言うか好き。
……というワケで、大好きなレオーネ映画の中でも特に好きな本作をシネコンの大スクリーンで観れたのは、ホントに感無量でした。
オープニングで汽車がやって来るまでの緊張感!
ヘンリー・フォンダやジェイソン・ロバーズが出てくる時のオペラのような演出!
ラストのブロンソンのとんでもアップ!
おかげで165分はあっという間。
多くを語らず画面で魅せるこの映画、「映画が好きで良かったなぁ」としみじみ思わずにはいられません。
レオーネ監督が僕らに遺してくれた、素晴らしい贈り物です。

4位 『細い目』(2004 ヤスミン・アフマド)
監督の没後10周年という事で出町座が特集を組んでいたので、たまたま観た映画です。一気に監督のファンになってしまいました。
舞台はマレーシア。
マレー人の女の子オーキッドと、中華系(華人)の男の子ジェイソンが恋に落ちて……
というボーイ・ミーツ・ガールものです。
ジェイソンくんは路上で海賊版VCDを売っているようなヤクザ者なので、オーキッドちゃんと仲良くなるのも苦労が絶えません。
その上、中華系であるジェイソンくんは、彼女の周りの友だちから「細い目」と揶揄されて良い思いをされていません。
2人の家族は、そんな子供たちを受け入れ、何とかこの恋が実るように温かく見守るのですが……
とにかく優しさに満ち溢れた映画です。登場人物たちが他の人に向ける優しさ、監督が登場人物に向ける優しさ。
しかし優しいだけでは、甘いだけの映画になってしまいます。
アフマド監督が偉いのは、この世界は優しさだけではなく厳しさもあるのだと、きちんと掲示するところです。
ジェイソンくんが生きる裏世界の恐ろしさ。中華系だからと言う事でいわれのない悪口を言われてしまう民族間の溝。
そんな厳しさを何とか乗り越えて心を通じ合わせようとする主役2人の姿は、とても健気で美しいです。
この手の恋愛映画では侯孝賢の『恋恋風塵』(1987)が大好きなのですが、
この『細い目』もそれに匹敵するくらい好きな映画になりました。一緒に『タレンタイム 優しい歌』(2009)も観まして、こちらも傑作でした。
この人の映画は普遍的なものを持っていますね。
もう新作が観られないという事実は、あまりに残酷すぎます……
3位 『視覚障害』(1986 フレデリック・ワイズマン)
新作『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(2017)が公開されるタイミングに合わせてか、
京都・大阪・神戸の映画館たちでフレデリック・ワイズマンの大規模な特集上映が組まれました。
彼はドキュメンタリー映画史に多大な功績を残している人物にも関わらずほとんどDVD化されていないので、今回の上映は極めて有意義かつ貴重だったと思います。そんな中に観た一本。
本作は「聾・盲シリーズ」の一作目であり、この作品に続くものとして『聴覚障害』『適応と仕事』『多重障害』(いずれも1986年)があります。
今回僕は、本作と『聴覚障害』を観ることが出来ました。
アラバマ州立の総合養護施設の中にある盲学校が舞台で、施設の子供たちが勉強や訓練をする光景をナレーションやテロップによる説明なしで映していくという、いつものワイズマン流で魅せていきます。
テレビのドキュメンタリー番組の作りだとよく説明が入るワケですが、そうなると僕たち視聴者は「どこか別の話、特別な話」のように感じてしまいます。
ワイズマンは説明を省き、映したものを淡々と掲示する事によって、観客は映画の中に引き込まれていきます。
彼の映画の中に「入り込んでゆく」感覚に陥るのです。
ジョン・カサヴェテスの映画も、このタッチに非常に近いものを感じさせます。その秘密は何なのか……
テストの成績が良かったため下の階にいる先生に答案用紙を見せに行こうとする子供のシーンが序盤にあるのですが、ここが凄い。
おぼつかないながらも、壁や手すりに沿って廊下や階段を渡ってゆく少年。その模様をずーっとワンカットでカメラは追いかけます。
観客は少年の足取りに緊張しながらも、予想以上に器用に歩いてゆくその姿を見て「おおっ」とも思います。
この「緊張と驚き」は、カメラを回しっぱなしのワンカットだからこそ体感できるのでしょう。
編集の段階で所々切らずに丸々使う。
この大胆さこそが、「映画が持ちうる自由」なのだと思うのです。
2位 『ひいくんのあるく町』(2017 青柳拓)
出町座は先日2周年目に突入したのですが、この映画はオープンしたての頃から「公開予定」のリストに入っておりました。
今年の7月に一週間限定で上映され、一応気にはなっていたものの特に期待せずに観たのもあるかもしれませんが……
本当に素晴らしい映画でした。これが卒業制作で作られた映画と聞いた日にゃ、ビックリです!
物語は監督の故郷、山梨県市川大門の町並みを日々歩き回っている謎のおじさん、ひいくんを追いかけるところから始まります。
障がい者の自立施設に通っているひいくんは、空いている時間で町を歩き回り、みんなのお手伝いをしています。
なので町のみんなにとって、ひいくんは誰もが知っている有名人。
一方、青柳監督の伯父さんは、かつて電気店を営んでいました。が、脳出血を患い認知症も併発しリハビリ生活を送っています。
伯父さんはカメラが趣味で、ずっと市川大門の風景を撮影していました。
そこには、賑っていた町や幼いひいくんや監督の姿が映っていました。
過去と現在が、つながり始めたのです。
自分たちの住んでいる町は、かつての賑わいある町とは変わってきているけれど、ひいくんが歩くことで、おじさんが写真を撮ることで様々な人々の記憶に残り続けています。そしてその記憶が、人と人のつながりが、映画というマジックで一つになります。
特別何かがあるワケでもない町。
でも、そこに住んでいる小さな声に耳を傾けてみると、自分の知らない町の歴史が浮かび上がってくる。
ささやかな記憶だからこそ、映画となって映し出されるとき、そのかけがえのなさにグッときます。
映画って、こんな素敵な奇跡をも生み出してくれるんですね。
さぁ、2019年の岩佐悠毅的第1位は……

1位 『カーマイン・ストリート・ギター』(2018 ロン・マン)
今年の1位はコレです!
いや~、こんなに豊かな時間を過ごせた映画はなかったです。早くディスク欲しいっすね!
ニューヨーク州グリニッジ・ヴィレッジに、ニューヨークの建物の廃材を使ってギターを作るという
お店『カーマイン・ストリート・ギター』があります。
パソコンも携帯も持たないギター職人のリック、パンキッシュな装いの見習いシンディ、
そしてリックの母親の3人が、このギター・ショップの店員たち。
この風変わりかつ魅力的なお店には、様々なミュージシャンたちが訪れる……
黙々と作業するリック。出来たばかりの新作ギターをインスタに投稿するシンディ、掃除をしているお母さん。
映画の出だしからしてスローペース。
そしてカメラもどっしりと構えて、店内に漂う落ち着いた雰囲気を切り取っています。
ミュージシャンたちは店の評判を聞きつけてやって来ます。
リックと雑談したり、彼の作ったギターを弾いている時の彼らはとても幸せそう。
変わりゆく街並みに、変わらないお店と、その人々。
この映画は、そんな彼らのささやかな歴史を映した素敵な映画です。
まるでギター版『コーヒー&シガレッツ』(2003)のような味わいです。
そうそう、この映画はミュージシャンとしてジム・ジャームッシュ監督も登場します。
虫に食われた木の内部を見せて「脳みそみたいだろ」なんて談笑してましたよ。
というのが、今年のベスト10でした!
ドキュメンタリー多いな……
意識したワケではないんですが、感銘を受けた映画を並べるとこうなっちゃいました!
僕自身ビックリしています。
今回ベスト10には入らなかったものの、劇場で観て面白かった、良かった映画たちがまだあります。
10本一気にご紹介~。
『AK ドキュメント黒澤明』(1985 クリス・マルケル)
『きみと、波にのれたら』(2019 湯浅政明)
『恐怖の報酬』(1977 ウィリアム・フリードキン)
『グロリア』(1980 ジョン・カサヴェテス)
『COLD WAR あの歌、2つの心』(2018 パヴェウ・パヴリコフスキ)
『シシリアン・ゴースト・ストーリー』(2017 ファビオ・グラッサドニア、アントニオ・ピアッツァ)
『魂のゆくえ』(2018 ポール・シュレイダー)
『ノーザン・ソウル』(2014 エレイン・コンスタンティン)
『パンク侍、斬られて候』(2018 石井岳龍)
『グロリア』は自宅で何度観たか分からないくらい大好きな映画。
シネマ神戸という映画館で『恐怖の報酬』と2本立てだったので行ってきました。
大きな画面で何とも贅沢な2本立てをしてきました。
実は『バンブルビー』と『スパイダーバース』も、シネマ神戸さんで観てきたのです。
素晴らしい映画館で、すっかりファンになってしまいました。
『突撃!博多愚連隊』(1978)や『狂い咲きサンダーロード』(1980)の石井聰亙監督が、石井岳龍と改名してからはピンと来る映画がなくてイマイチだな……
と思っていたら『パンク侍』なるトンでもない爆弾をぶちかましていたんですね。これは快作でした!
『魂のゆくえ』は、いずれ本blogで取りあげたい映画です。色々と思うところありだったので。
さてさて。
『イエスタデイ』(2019 ダニー・ボイル)
『幸福路のチー』(2017 ソン・シンイン)
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(2019 片渕須直)
『象は静かに座っている』(2018 フー・ボー)
『ラストムービー』(1971 デニス・ホッパー)
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019 クエンティン・タランティーノ)
等々を来年に持ち越して、今年は終わりたいと思います。
これらを持ち越しちゃマズいだろってのは、本人が一番わかってるので突っ込まないこと。
それにしても……
久しぶりに映画の紹介記事を書くと自分で「ああ、なんか腕落ちてないかぁ?」なんて思ってしまいますね。
やはり継続は力なり。
続けることで書く腕も磨かれていくんですよね。
来年はもっと更新できるように頑張りますので、どうか見捨てないでやってくださいね……
それでは、来年もどうぞよろしくお願いします!
イラスト:城間典子
2018年12月31日月曜日
第17回 2018年を振り返ってみようベスト その2
お待たせしました!
私的2018年ベスト10、5位から1位の発表です!
かっとばしていきましょう!
5位 『モアナ 南海の歓喜』(1926,1980,2014 ロバート・フラハティ(共同監督:フランシス・フラハティ/モニカ・フラハティ))
「ドキュメンタリー映画の父」と呼ばれている(確かそうだったはず)ロバート・フラハティ。
以前観た『極北のナヌーク』(1922)が予想以上の面白さだったので、本作も期待して観に行きました。
結果、素晴らしかった。
本作は1926年の段階ではサイレント映画として公開され、その後1980年に娘のモニカが撮影した島に赴き、島の生活の音を録音しました。
こうして80年にサウンド版『モアナ』が完成し、2014年、今度は2K修復による美しい画面も獲得。
今回観れたのは、その美しい画面と音を刻み込んだ決定版『モアナ』でした。
何とまぁ豊かな映画でしょう。
後から足された島の音という音は、26年の撮影当時に録ってきたとしか思えないほど自然で、とても生々しい。
繊細な音の設計が本当にお見事。
カメラワークも面白く、けっこう引き気味の画が多いです。広大な大自然の中で暮らしているというのが一目で分かります。
ベタではありますが、こういう基本を押さえた演出って本当に大事だと思います。
島の少年がヤシの木に登るシーンがあるのですが、ここは面白いです。普通なら画面いっぱいにヤシの木の全貌を見せて、そこを登っている少年が小さく映るといった演出をする事が多いかもしれませんが、
この映画では少年が木に登っている→木に登っているから少年が画面から消える→消えた時にカメラはパンをして少年を追いかける。少年は登り続けている→これの繰り返しです。
木がどれほどの大きさなのか想像力を掻き立てられますし、ゆっくりゆっくりしたテンポでカメラが追いかけるので、妙な笑いがこみ上げてくる、ユーモラスなシーンでもあります。この演出の自由度!
ドキュメンタリー黎明期だからこそ出来た遊び心なのかもしれません。
4位 『若おかみは小学生!』(2018 高坂希太郎)
これも大当たりの映画でした。そもそも、あの高坂監督(『茄子』シリーズは傑作!)の新作なんだから面白くないワケがない!
と信じて出かけたのが良かった。94分の中におっこの成長っぷりが、周りの人々がおっこによって癒され、変わっていく様が丁寧に描かれており、何より、おっこが可愛かった!
キャラクターデザインを見た時には「うっ……」となったのですが、それでも高坂監督を信じて良かった。
動くことによって、おっこの可愛さが引き立つんです!
小林星蘭ちゃんも、ハマり役でしたね。
そうそうこの映画、やっくんこと薬丸裕英さんやホラン千秋さん、はてはバナナマン設楽さんなどの芸能人が多くキャスティングされており、観る前は大丈夫かなぁ、芸能人起用かぁと思っていました。
しかし、皆さん良かった!
上手いか下手かは各々が判断する事として、皆さん見事にハマっていました。
特にホラン千秋さん。
さすが、かつて『魔法戦隊マジレンジャー』(2005)に出ていた(悪の幹部側で)だけの事はあるなぁ。そこでアフレコ鍛えられたんだろうなぁ。と、感慨深く観ていました……
良かった尽くしの良い映画でした。
3位 『寝ても覚めても』(2018 濱口竜介)
正直言って、これまでの濱口映画(『PASSION』(2008)など)は「ほー」と思う事はあっても好きになれないなぁと思っていたのですが、本作にはビックリしました。
この人の映画、ここまで面白かったっけ!? と疑うほどに。
長回しの多用で人物の動きをダラダラと追い続ける今の日本映画において、ここまで視線の事を律義に考える人がいたなんて! と感激してしまいましたよ。
演者の方々も、背伸びしてない感じで好印象。東出昌大さんは、以前から好きな役者さんでしたが、本作でより好きになりました。
これはいよいよ、あの『ハッピーアワー』(2015)を観なきゃだゾ……
はい、映画ファンを称したモグリが此処にいます。すみません。
2位 『ボーダーライン』(2015 ドゥニ・ヴィルヌーヴ)
開館一周年を迎えた、京都は出町柳の映画館「出町座」で『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』(2018)が公開されるというので、前作も一緒に上映しておりました。
Blu-rayを積ん見状態にしていたので、「どうせ観るなら映画館が良いな」と思って出向いたら大当たりでした。
映画館で観てこそ映える作品でしたね!
もっとアクションしている映画かと思っていましたが、ドゥニ監督の作家印が見事に刻まれた、ヒリヒリする人間ドラマの傑作でした。
出口の見えない地獄をひたすら進む主人公たちにシンクロするヨハン・ヨハンソンの不穏な音楽、引きの画で圧倒的な絶望と説得力を生み出すロジャー・ディーキンスのカメラ。
そして徹底的にドライな目線で、まるで神の如き視線でもって人物たちを見つめるドゥニ監督の演出…… いやぁ、凄かった。
さて、栄光の第1位は……
1位 『1999年の夏休み』(1988 金子修介)
有無も言わせぬ、ぶっちぎりの1位です。
この映画を観れたからこそ、中村由利子さんを知り、ヘルマン・ヘッセを買い、
竹宮惠子さんの『風と木の詩』を読もうとしているのですから!
(皆さん、「そこは萩尾望都さんじゃねーの」という突っ込みは無しで!
萩尾さんよりも竹宮さんの絵の方が個人的には好きでして……)
そう。以前このblogで本作を紹介した後に、DVDを手に入れたのです。
レターボックス・サイズかつあまり綺麗な画質ではないのですが、いつでも4人に会えるワケです。
加えてこのDVD、本編音声だけでなく、中村由利子さんのBGM(主に劇中で使われた『風の鏡』からの音楽。
しかし、他のアルバムの曲も豊富に収録)が流れる音声トラックもありまして……
なので、BGMならぬBGVとしても楽しんでいます。ハイ、幸せです。
しかし、定期的に観返してしまう度に「則夫、かわいいよ則夫」状態になってしまうのは流石にマズい気がしている今日この頃です。
さて。2018年に劇場で観た映画たちを振り返ってみました。
旧作の割合が本当に多いなぁ……
懐に余裕がないと、どうしたって「観たかったあの映画」とか「本邦初上映」とかに惹かれてしまうんですよ。
ところで、今回のランキングに入れられなかった作品たちの多かったこと!
『暗殺のオペラ』(1970 ベルナルド・ベルトルッチ)
『動くな、死ね、甦れ!』(1989 ヴィターリー・カネフスキー)
『恐怖の報酬』(1977 ウィリアム・フリードキン)
といった、何れも観たかった幻の映画たちが、美しいリマスター版で映画館で観られた事も大収穫でしたし、
『犬ヶ島』(2018 ウェス・アンダーソン)
『ウインド・リバー』(2017 テイラー・シェリダン)
『希望のかなた』(2017 アキ・カウリスマキ)
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』(2017 ルーシー・ウォーカー)
『ライオンは今夜死ぬ』(2017 諏訪敦彦)
『ワンダーストラック』(2017 トッド・ヘインズ)
などの最新傑作が沢山あって、ランク付けに困りました。
皆さんは、どんな映画を映画館でご覧になりましたか?
また来年も、無精者なりに、いち映画ファンとして地道に様々な映画を観ていこうと思います。
それでは、よいお年を!
イラスト:城間典子
(昨日に引き続き、映画館にまつわるイラストたちです。あ、1枚だけ『1999年の夏休み』の則夫を描いたイラストを載せてしまいました。好きなんだから、しょうがない)
私的2018年ベスト10、5位から1位の発表です!
かっとばしていきましょう!
5位 『モアナ 南海の歓喜』(1926,1980,2014 ロバート・フラハティ(共同監督:フランシス・フラハティ/モニカ・フラハティ))
「ドキュメンタリー映画の父」と呼ばれている(確かそうだったはず)ロバート・フラハティ。
以前観た『極北のナヌーク』(1922)が予想以上の面白さだったので、本作も期待して観に行きました。
結果、素晴らしかった。
本作は1926年の段階ではサイレント映画として公開され、その後1980年に娘のモニカが撮影した島に赴き、島の生活の音を録音しました。
こうして80年にサウンド版『モアナ』が完成し、2014年、今度は2K修復による美しい画面も獲得。
今回観れたのは、その美しい画面と音を刻み込んだ決定版『モアナ』でした。
何とまぁ豊かな映画でしょう。
後から足された島の音という音は、26年の撮影当時に録ってきたとしか思えないほど自然で、とても生々しい。
繊細な音の設計が本当にお見事。
カメラワークも面白く、けっこう引き気味の画が多いです。広大な大自然の中で暮らしているというのが一目で分かります。
ベタではありますが、こういう基本を押さえた演出って本当に大事だと思います。
島の少年がヤシの木に登るシーンがあるのですが、ここは面白いです。普通なら画面いっぱいにヤシの木の全貌を見せて、そこを登っている少年が小さく映るといった演出をする事が多いかもしれませんが、
この映画では少年が木に登っている→木に登っているから少年が画面から消える→消えた時にカメラはパンをして少年を追いかける。少年は登り続けている→これの繰り返しです。
木がどれほどの大きさなのか想像力を掻き立てられますし、ゆっくりゆっくりしたテンポでカメラが追いかけるので、妙な笑いがこみ上げてくる、ユーモラスなシーンでもあります。この演出の自由度!
ドキュメンタリー黎明期だからこそ出来た遊び心なのかもしれません。
4位 『若おかみは小学生!』(2018 高坂希太郎)
これも大当たりの映画でした。そもそも、あの高坂監督(『茄子』シリーズは傑作!)の新作なんだから面白くないワケがない!
と信じて出かけたのが良かった。94分の中におっこの成長っぷりが、周りの人々がおっこによって癒され、変わっていく様が丁寧に描かれており、何より、おっこが可愛かった!
キャラクターデザインを見た時には「うっ……」となったのですが、それでも高坂監督を信じて良かった。
動くことによって、おっこの可愛さが引き立つんです!
小林星蘭ちゃんも、ハマり役でしたね。
そうそうこの映画、やっくんこと薬丸裕英さんやホラン千秋さん、はてはバナナマン設楽さんなどの芸能人が多くキャスティングされており、観る前は大丈夫かなぁ、芸能人起用かぁと思っていました。
しかし、皆さん良かった!
上手いか下手かは各々が判断する事として、皆さん見事にハマっていました。
特にホラン千秋さん。
さすが、かつて『魔法戦隊マジレンジャー』(2005)に出ていた(悪の幹部側で)だけの事はあるなぁ。そこでアフレコ鍛えられたんだろうなぁ。と、感慨深く観ていました……
良かった尽くしの良い映画でした。
3位 『寝ても覚めても』(2018 濱口竜介)
正直言って、これまでの濱口映画(『PASSION』(2008)など)は「ほー」と思う事はあっても好きになれないなぁと思っていたのですが、本作にはビックリしました。
この人の映画、ここまで面白かったっけ!? と疑うほどに。
長回しの多用で人物の動きをダラダラと追い続ける今の日本映画において、ここまで視線の事を律義に考える人がいたなんて! と感激してしまいましたよ。
演者の方々も、背伸びしてない感じで好印象。東出昌大さんは、以前から好きな役者さんでしたが、本作でより好きになりました。
これはいよいよ、あの『ハッピーアワー』(2015)を観なきゃだゾ……
はい、映画ファンを称したモグリが此処にいます。すみません。
2位 『ボーダーライン』(2015 ドゥニ・ヴィルヌーヴ)
開館一周年を迎えた、京都は出町柳の映画館「出町座」で『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』(2018)が公開されるというので、前作も一緒に上映しておりました。
Blu-rayを積ん見状態にしていたので、「どうせ観るなら映画館が良いな」と思って出向いたら大当たりでした。
映画館で観てこそ映える作品でしたね!
もっとアクションしている映画かと思っていましたが、ドゥニ監督の作家印が見事に刻まれた、ヒリヒリする人間ドラマの傑作でした。
出口の見えない地獄をひたすら進む主人公たちにシンクロするヨハン・ヨハンソンの不穏な音楽、引きの画で圧倒的な絶望と説得力を生み出すロジャー・ディーキンスのカメラ。
そして徹底的にドライな目線で、まるで神の如き視線でもって人物たちを見つめるドゥニ監督の演出…… いやぁ、凄かった。
さて、栄光の第1位は……
1位 『1999年の夏休み』(1988 金子修介)
有無も言わせぬ、ぶっちぎりの1位です。
この映画を観れたからこそ、中村由利子さんを知り、ヘルマン・ヘッセを買い、
竹宮惠子さんの『風と木の詩』を読もうとしているのですから!
(皆さん、「そこは萩尾望都さんじゃねーの」という突っ込みは無しで!
萩尾さんよりも竹宮さんの絵の方が個人的には好きでして……)
そう。以前このblogで本作を紹介した後に、DVDを手に入れたのです。
レターボックス・サイズかつあまり綺麗な画質ではないのですが、いつでも4人に会えるワケです。
加えてこのDVD、本編音声だけでなく、中村由利子さんのBGM(主に劇中で使われた『風の鏡』からの音楽。
しかし、他のアルバムの曲も豊富に収録)が流れる音声トラックもありまして……
なので、BGMならぬBGVとしても楽しんでいます。ハイ、幸せです。
しかし、定期的に観返してしまう度に「則夫、かわいいよ則夫」状態になってしまうのは流石にマズい気がしている今日この頃です。
さて。2018年に劇場で観た映画たちを振り返ってみました。
旧作の割合が本当に多いなぁ……
懐に余裕がないと、どうしたって「観たかったあの映画」とか「本邦初上映」とかに惹かれてしまうんですよ。
ところで、今回のランキングに入れられなかった作品たちの多かったこと!
『暗殺のオペラ』(1970 ベルナルド・ベルトルッチ)
『動くな、死ね、甦れ!』(1989 ヴィターリー・カネフスキー)
『恐怖の報酬』(1977 ウィリアム・フリードキン)
といった、何れも観たかった幻の映画たちが、美しいリマスター版で映画館で観られた事も大収穫でしたし、
『犬ヶ島』(2018 ウェス・アンダーソン)
『ウインド・リバー』(2017 テイラー・シェリダン)
『希望のかなた』(2017 アキ・カウリスマキ)
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』(2017 ルーシー・ウォーカー)
『ライオンは今夜死ぬ』(2017 諏訪敦彦)
『ワンダーストラック』(2017 トッド・ヘインズ)
などの最新傑作が沢山あって、ランク付けに困りました。
皆さんは、どんな映画を映画館でご覧になりましたか?
また来年も、無精者なりに、いち映画ファンとして地道に様々な映画を観ていこうと思います。
それでは、よいお年を!
イラスト:城間典子
(昨日に引き続き、映画館にまつわるイラストたちです。あ、1枚だけ『1999年の夏休み』の則夫を描いたイラストを載せてしまいました。好きなんだから、しょうがない)
2018年12月30日日曜日
第16回 2018年を振り返ってみようベスト その1
皆さん、こんばんは!
今、このblogは大分県の実家で書いています。何故、実家なのか。それは年末だから。
そう。2018年も、もうすぐ終わってしまいます。新しい環境に引っ越し(とは言っても以前の場所から車で10分ほど)、新しい職場で奮闘し、色々あったんだなぁと思わされる一年でした。
そんな2018年に観た映画たちの中で、どんな作品が心に残ったのでしょうか。思い出しながら、この文章を書いていこうと思います。
本当は2018年に公開された新作を対象とするのが普通なのでしょうが、となると俄然観た本数がガクッと減ってしまう無精者でして……
旧作のリバイバル(デジタルリマスター版など)も、範囲に含めます!
そして今回は、一つ一つの文章が長くなってしまう可能性大なので、2回に分けて投稿します。
あらすじも長くなること必至ですので、端折ります。
では、さっそく10位から振り返ってみましょう。
10位 『ラスト・ワルツ』(1978 マーティン・スコセッシ)
公開40周年を記念してのデジタル・リマスター版という事で、「ラスト・ワルツ者」である僕は勿論観に行きました。
実は以前、吉祥寺バウスシアターが閉館する際に開催された「ラストバウス爆音上映」で、この映画もラインナップに入っていたのです。
しかし日程的に観る事が叶わず……(その時観た爆音映画は、デ・パルマの『ファントム・オブ・パラダイス』(1974)と石井聰亙の『シャッフル』(1981)『半分人間 アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン』(1985)でした。ロック!)
何年か後に、その時の雪辱を果たす事が出来ました。
ザ・バンドの解散コンサートを撮っただけの音楽ドキュメンタリー映画なのですが、この映画の持つ凄みはどうしたことでしょう。
アメリカに数多くいるバンドの内の一つが解散するというだけなのに、彼らの歌っている様子、そしてインタビューを観ていると、まるでアメリカの音楽の歴史に幕が閉じられたような……
我ながら大袈裟だなぁと思いつつも、本当にそう思ってしまいます。
とは言え、ザ・バンドよりも格好良いのはゲストで来ているジョニ・ミッチェルで、ザ・バンドよりもオイシイ役なのはトリを飾ったボブ・ディランだと毎度毎度思うのですが!
9位 『早春』(1971 イエジー・スコリモフスキ)
これまたリマスター版によるリバイバル上映です。
約10年前にWOWOWで録画したDVD-R(汚い画質で、しかもスタンダード・サイズ)を大事に持っていた僕ですから、勿論行きました。
鮮やかな画面のおかげで、まるで別の映画を観ているような、否、初見のような気持ちで楽しみました。
年上のお姉さんスージーを想う主人公マイクの心理は、同じ男としてよく分かります。
犯罪スレスレ(と言うか時々シャレにならない)の行為をしてしまうその純情すぎる純情!
恋は盲目!
スコリモフスキの映画の人物たちって、ホントいつも盲目です。
所々に映える鮮烈な赤が、本作の世界観に超現実感を生み出しており、この点においても、彼の持っている映画感覚というのは凄いなぁと惚れ惚れしてしまいます。
ちょっとしたスパイス(小道具、美術、視点の変化)を加えるだけで映画の世界観はグッと拡がるので、面白いものですね。
8位 『きみの鳥はうたえる』(2018 三宅唱)
佐藤泰志の小説はここ数年で何作か映画化となってきましたが、最も早く映画化された熊切和嘉監督の『海炭市叙景』(2010)を除いて何れも酷い映画化だな…… と観たのを後悔することしきりでした。そこにきて今回の『きみ鳥』です。
濱口監督と同じように、彼の以前の作品(『Playback』(2012)です)には世間の評判ほどノリきれなかった過去もあったため、今回はどうかなぁとだいぶ不安だったのですが、杞憂に終わりました。
予想に反して、良い青春映画でした。
映画らしく盛り上げるための妙な改変(これもハッキリ言ってお笑いですが)もなく、主人公たちが体験した、ずっと流れているかのような明るくも気怠い時間を上手く掴んでいたように思います。
メジャーな映画では初監督となる(はずの)三宅監督ですが気張っている様子もなく、実に自然体で撮られているように感じられました。
「現場の雰囲気が見える映画」と言ったら良いでしょうか。
7位 『スリー・ビルボード』(2017 マーティン・マクドナー)
何故これを観に行ったのかなと思い返すと、「評判が良かったから」とか「ウディ・ハレルソンが出てたから」とかしか思い出せないのですが、今さら理由はどうだっていいのです。観れたことが大事。
これも良かったです。アメリカの抱える悪、それに拮抗する善を真っ向から描いた映画で、演者の力演、それを逃すまいとするカメラががっぷりと組み合った、力作と言えるでしょう。
コーエン兄弟の『ファーゴ』(1996)の時は好きになれなかったフランシス・マクド―マンドですが、本作の彼女は良かったですねぇ!
しかし彼女以上に素晴らしかったのは、サム・ロックウェルでした。やる気無しの本当にダメな警官の典型なのかと思わせておいて、徐々に明かされていく彼なりの正義、信念…… この点においてはウディ・ハレルソンの役柄も同じなのですが、彼らの心情をきちんと追いかけていたのも、この映画が評価された要因の一つでしょう。
こういう映画を作れるところに、アメリカの懐の深さを感じてしまうのです……
6位 『なみのおと』(2011 酒井耕・濱口竜介)
震災直後に作られた、「東北記録映画三部作」の第一部です。
本作の存在自体は知っていたものの、「濱口監督のだし……」という今では信じられない理由で長いこと観ていなかった作品でした。
しかし、『寝ても覚めても』公開記念なのか、(京都の出町柳に昨年12月に出来た)出町座で、この東北三部作が特集されると言うので、観てきました。ビックリしました……
大袈裟な物言いですが、ドキュメンタリーの新しい、そして自分の思うドキュメンタリー映画の最も理想的な形だと思いました。
この映画の構成は簡単なものです。3.11の際に震災に遭われた方々を向かい合わせ、各々のその時の記憶を対話させるというスタイル。
したがって、この映画には津波で押し流される家々や、地震で崩れ去るビル群といった映像は一切流れません。
画面に映るのは、2011年の3月11日を思い出し、相手にその時の状況、心情を伝える2人の人間が映るだけ。
相手=スクリーンの向こうにいる観客に対し向けられる「伝える」という意識。
しかも「各々が相手の目を見て話しているんですよ」というのを示すために、劇映画のようにいちいち切り返しをしているんです!
ドキュメンタリーでそんな事をすれば絶対面倒くさいに決まっているのに、わざわざそれをするという大胆不敵さ、潔さ!
『寝ても覚めても』の時にも感じた「視線に対する律義さ」は、この東北三部作で磨いていったのかもしれません。
ところで…… 本作につきものの「津波」というキーワードは、僕の故郷である大分県にも、これから絶対に必要なキーワードになると思われます。
(南海トラフ地震の事です)
その事をより考えるためにも、そしてドキュメンタリー映画の新たな豊かさを再認識するためにも、これら「東北記録映画三部作」のDVD化、Blu-ray化を強く望むものです。
10位から6位を、ざっと振り返ってみました。
拙い感想になってしまい、我ながら恥ずかしいと言うか申し訳ないと言うか……
これを読んで「この映画、観てみようか」と思って下さる方がいたら、本当に有難い。
そんな反省しきりの僕ですが、明日は5位から1位を振り返りますよ!
イラスト:城間典子(映画館をテーマにしたイラストたちです。実はだいぶ前に描かれたイラストなのですが、今回使わせてもらう事となりました。)
今、このblogは大分県の実家で書いています。何故、実家なのか。それは年末だから。
そう。2018年も、もうすぐ終わってしまいます。新しい環境に引っ越し(とは言っても以前の場所から車で10分ほど)、新しい職場で奮闘し、色々あったんだなぁと思わされる一年でした。
そんな2018年に観た映画たちの中で、どんな作品が心に残ったのでしょうか。思い出しながら、この文章を書いていこうと思います。
本当は2018年に公開された新作を対象とするのが普通なのでしょうが、となると俄然観た本数がガクッと減ってしまう無精者でして……
旧作のリバイバル(デジタルリマスター版など)も、範囲に含めます!
そして今回は、一つ一つの文章が長くなってしまう可能性大なので、2回に分けて投稿します。
あらすじも長くなること必至ですので、端折ります。
では、さっそく10位から振り返ってみましょう。
10位 『ラスト・ワルツ』(1978 マーティン・スコセッシ)
公開40周年を記念してのデジタル・リマスター版という事で、「ラスト・ワルツ者」である僕は勿論観に行きました。
実は以前、吉祥寺バウスシアターが閉館する際に開催された「ラストバウス爆音上映」で、この映画もラインナップに入っていたのです。
しかし日程的に観る事が叶わず……(その時観た爆音映画は、デ・パルマの『ファントム・オブ・パラダイス』(1974)と石井聰亙の『シャッフル』(1981)『半分人間 アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン』(1985)でした。ロック!)
何年か後に、その時の雪辱を果たす事が出来ました。
ザ・バンドの解散コンサートを撮っただけの音楽ドキュメンタリー映画なのですが、この映画の持つ凄みはどうしたことでしょう。
アメリカに数多くいるバンドの内の一つが解散するというだけなのに、彼らの歌っている様子、そしてインタビューを観ていると、まるでアメリカの音楽の歴史に幕が閉じられたような……
我ながら大袈裟だなぁと思いつつも、本当にそう思ってしまいます。
とは言え、ザ・バンドよりも格好良いのはゲストで来ているジョニ・ミッチェルで、ザ・バンドよりもオイシイ役なのはトリを飾ったボブ・ディランだと毎度毎度思うのですが!
9位 『早春』(1971 イエジー・スコリモフスキ)
これまたリマスター版によるリバイバル上映です。
約10年前にWOWOWで録画したDVD-R(汚い画質で、しかもスタンダード・サイズ)を大事に持っていた僕ですから、勿論行きました。
鮮やかな画面のおかげで、まるで別の映画を観ているような、否、初見のような気持ちで楽しみました。
年上のお姉さんスージーを想う主人公マイクの心理は、同じ男としてよく分かります。
犯罪スレスレ(と言うか時々シャレにならない)の行為をしてしまうその純情すぎる純情!
恋は盲目!
スコリモフスキの映画の人物たちって、ホントいつも盲目です。
所々に映える鮮烈な赤が、本作の世界観に超現実感を生み出しており、この点においても、彼の持っている映画感覚というのは凄いなぁと惚れ惚れしてしまいます。
ちょっとしたスパイス(小道具、美術、視点の変化)を加えるだけで映画の世界観はグッと拡がるので、面白いものですね。
8位 『きみの鳥はうたえる』(2018 三宅唱)
佐藤泰志の小説はここ数年で何作か映画化となってきましたが、最も早く映画化された熊切和嘉監督の『海炭市叙景』(2010)を除いて何れも酷い映画化だな…… と観たのを後悔することしきりでした。そこにきて今回の『きみ鳥』です。
濱口監督と同じように、彼の以前の作品(『Playback』(2012)です)には世間の評判ほどノリきれなかった過去もあったため、今回はどうかなぁとだいぶ不安だったのですが、杞憂に終わりました。
予想に反して、良い青春映画でした。
映画らしく盛り上げるための妙な改変(これもハッキリ言ってお笑いですが)もなく、主人公たちが体験した、ずっと流れているかのような明るくも気怠い時間を上手く掴んでいたように思います。
メジャーな映画では初監督となる(はずの)三宅監督ですが気張っている様子もなく、実に自然体で撮られているように感じられました。
「現場の雰囲気が見える映画」と言ったら良いでしょうか。
7位 『スリー・ビルボード』(2017 マーティン・マクドナー)
何故これを観に行ったのかなと思い返すと、「評判が良かったから」とか「ウディ・ハレルソンが出てたから」とかしか思い出せないのですが、今さら理由はどうだっていいのです。観れたことが大事。
これも良かったです。アメリカの抱える悪、それに拮抗する善を真っ向から描いた映画で、演者の力演、それを逃すまいとするカメラががっぷりと組み合った、力作と言えるでしょう。
コーエン兄弟の『ファーゴ』(1996)の時は好きになれなかったフランシス・マクド―マンドですが、本作の彼女は良かったですねぇ!
しかし彼女以上に素晴らしかったのは、サム・ロックウェルでした。やる気無しの本当にダメな警官の典型なのかと思わせておいて、徐々に明かされていく彼なりの正義、信念…… この点においてはウディ・ハレルソンの役柄も同じなのですが、彼らの心情をきちんと追いかけていたのも、この映画が評価された要因の一つでしょう。
こういう映画を作れるところに、アメリカの懐の深さを感じてしまうのです……
6位 『なみのおと』(2011 酒井耕・濱口竜介)
震災直後に作られた、「東北記録映画三部作」の第一部です。
本作の存在自体は知っていたものの、「濱口監督のだし……」という今では信じられない理由で長いこと観ていなかった作品でした。
しかし、『寝ても覚めても』公開記念なのか、(京都の出町柳に昨年12月に出来た)出町座で、この東北三部作が特集されると言うので、観てきました。ビックリしました……
大袈裟な物言いですが、ドキュメンタリーの新しい、そして自分の思うドキュメンタリー映画の最も理想的な形だと思いました。
この映画の構成は簡単なものです。3.11の際に震災に遭われた方々を向かい合わせ、各々のその時の記憶を対話させるというスタイル。
したがって、この映画には津波で押し流される家々や、地震で崩れ去るビル群といった映像は一切流れません。
画面に映るのは、2011年の3月11日を思い出し、相手にその時の状況、心情を伝える2人の人間が映るだけ。
相手=スクリーンの向こうにいる観客に対し向けられる「伝える」という意識。
しかも「各々が相手の目を見て話しているんですよ」というのを示すために、劇映画のようにいちいち切り返しをしているんです!
ドキュメンタリーでそんな事をすれば絶対面倒くさいに決まっているのに、わざわざそれをするという大胆不敵さ、潔さ!
『寝ても覚めても』の時にも感じた「視線に対する律義さ」は、この東北三部作で磨いていったのかもしれません。
ところで…… 本作につきものの「津波」というキーワードは、僕の故郷である大分県にも、これから絶対に必要なキーワードになると思われます。
(南海トラフ地震の事です)
その事をより考えるためにも、そしてドキュメンタリー映画の新たな豊かさを再認識するためにも、これら「東北記録映画三部作」のDVD化、Blu-ray化を強く望むものです。
10位から6位を、ざっと振り返ってみました。
拙い感想になってしまい、我ながら恥ずかしいと言うか申し訳ないと言うか……
これを読んで「この映画、観てみようか」と思って下さる方がいたら、本当に有難い。
そんな反省しきりの僕ですが、明日は5位から1位を振り返りますよ!
イラスト:城間典子(映画館をテーマにしたイラストたちです。実はだいぶ前に描かれたイラストなのですが、今回使わせてもらう事となりました。)
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