2023年10月2日月曜日

第27回 京都みなみ会館のオールナイトのこと

こんばんは!
2023年930日、京都市内にある一つの映画館が閉館しました。
その名は、京都みなみ会館。
京都シネマや出町座など、京都市にはいくつかミニシアターがありますが、その中でも個人的に多く通っていたのが本館でした。
今回は通常の映画レビューをお休みし、この映画館についての思い出を書き留めようと思います。
 
2回目は、京都みなみ会館の名物でもあったオールナイト上映の事を書きます。
1回目に書いた「京都みなみ会館の思い出」はコチラからご覧ください!
 
 
そう、京都みなみ会館と言えば、何と言ってもオールナイト(以下、AN)上映です。
「大学生で時間とヒマがあったから」と言えばそれまでですが、今現在の生活では考えられないくらいオールナイトへ行っていました。
「コレを観たい!」と思って行ってみると、ラインナップの中にあるノーマークだった映画が面白くて新しい発見、なんて事もありました。こういう出会いがあるのも、ANの良いところです。
人気のANになるとロビーに収まらずに出入り口まで長蛇の列が…… なんて光景も、コロナ後である現在からすると幻のようにも感じられます。
 
 
201164日「松田龍平ナイト」
『ナイン・ソウルズ』(2003)→『恋の門』(2004)→『46億年の恋』(2005)→『青い春』(2001)
 
これが人生初のANでした。豊田利晃監督の『青い春』(2001)は観ていたものの、大画面&フィルム上映により別物のような感覚で触れる事となりました。
46億年の恋』は寝ぼけ眼での鑑賞だったので、歪みまくった夢を見ているような感覚に陥りました。
今や偏愛映画である『恋の門』(2004)も、この時に鑑賞してゾッコン惚れこんだのでした。
それにしても松田龍平は、つくづく映画映えする顔です。
 
 
20111119日「U.K.ロック×映画ナイト」
『トレインスポッティング』(1996)→『コントロール』(2007)→『グラストンベリー』(2006)→『(500)日のサマー』(2009)
 
初の洋画AN。気合を入れて臨んだはずが、しっかり見れたのは『トレイン~』くらいで、『コントロール』『(500)日~』はうろ覚え、『グラストンベリー』に至っては「コレあったんだっけ」と忘却の彼方。
しかしこのANのおかげで、京都みなみ会館=『トレインスポッティング』という図式が出来上がりました。
(『トレインスポッティング』と『青い春』は、その後も度々上映されていたため)
 
 
20111210日「京都怪獣映画祭ナイト」
トークショー(久保明、福田裕彦)→福田裕彦 怪獣・特撮映画音楽ライブ→『怪獣大戦争』(1965)→『大魔神』(1966)→『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』(1967)
 
「みなみ会館と言えば怪獣!」と言われるほどになった、怪獣映画祭の第1回です。
スタートを切るにふさわしい大迫力大興奮の3本ですが、驚いたのはゲストでいらした久保明さん。
若い頃の優しく甘いマスクはそのままで素敵に年を重ねられており、思わず「自分ときたら…」と意味もない比較をしてしまいました。ちなみに久保さん、上映された『怪獣大戦争』の事はあまり記憶になく、なんといっても『マタンゴ』(1963)が印象深い仕事だったとトークイベントで仰っていました…。
怪獣映画祭の司会者として毎回来ていた木原浩勝さんは、新耳袋の人として名前だけは知っていました。
が、氏が凄い怪獣オタクかつジブリで働いていたと知った時は「人生色々だなぁ~」と、変な驚き方をしてしまいました。
 
 
2012428日「相米慎二ナイト」
『翔んだカップル』(1980)→『セーラー服と機関銃』(1981)→『台風クラブ』(1985)→『お引越し』(1993)
 
強く印象に残っているのは『セーラー服~』で、経年劣化したフィルムで上映されたため赤っぽくなっており、全編を通して夕焼け模様といった有様でした。でもそれが悪かったと言いたいのではなく、映画館のフィルム上映でしか味わえない経験を楽しめて良かったなと、当時も今も思います。
『台風クラブ』のうねるような熱量と悪夢っぽさにクラクラした後の『お引越し』は、〆にふさわしい爽やかっぷりでした。
*『翔んだカップル』はディレクターズ・カット版で上映されたのですが、タイトル曰く『翔んだカップル ラブコールHIROKOオリジナル版』が正式名称だそうで…… なんか凄いな。
 
 
2012128日「『赤い季節』公開記念オールナイト DEAR OUTLAW FILMS
『青い春』(2001)→トークショー(新井浩文、能野哲彦、村上淳)→『タクシードライバー』(1976)→『殺しの烙印』(1967)→『コントラクト・キラー』(1990)
 
『赤い季節』(2012)の監督・能野哲彦さんがチョイスした映画のAN
主演の新井浩文目当ての女性客でごった返していたかと思うと、彼のトークショー(村上淳も登壇)が終わった途端ゴッソリ観客数が減った事が、怒りと共に思い出されます。
「しょせん映画じゃなくてナマの有名人見たいだけかよっ!」と。
しかも『殺しの烙印』の時にはシュールさ故か笑いが漏れ、しかも笑いの種類が「俺()たち、ちゃんと分かってますよ」的な冷笑的な笑いだったため、それにも腹を立てるっていう…… 我ながらめんどくさい映画ファンです。
でも、ラインナップも内容もサイコー!
 
 
201383日「奇々怪々ナイト」
トークショー(みうらじゅん、田口トモロヲ)→『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(1969)→ゲストによるセレクト覆面上映2
 
ブロンソンズのお二人がゲスト&作品チョイスをしたANで、トークショーで質問をした際に特製AMAバッヂ(海女。あまちゃんブームでしたからね…)を頂きました。
石井輝男監督の『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(1969)がデカいスクリーンで観れるとあって、勇んで行った覚えがあります。
ケッタイな映画の代名詞として名を知られている本作ですが、なかなか泣かせるシッカリした映画だと思うのは僕だけですか!?
後の2作品は、お二人の選んだ覆面上映。トモロヲさんの選んだ一つは覚えているのですが、みうらさんが何を選んだか、忘れてしまいました…。
 
 
2014426日「真夜中のサスペリアナイト」
トークショー(浅尾典彦)→『サスペリア』(1977)→『サスペリアPART2完全版』(1975)→『アクエリアス』(1986)
 
でっかいスクリーンでギンギラガンガンな『サスペリア』を観るというのは、初鑑賞以来の長年願ってきた夢。それを叶えてくれたのがこのAN。この夜の収穫と言えば、アルジェント監督の弟子であるミケーレ・ソアヴィ監督の長編デビュー作『アクエリアス』でした。
舞台で起こるフクロウ男による連続殺人は画作りや殺され方などが凝っており、つかみバッチリのオープニングシーンも格好良く、嫌らしさのないビジュアリストっぷりに大いに酔わされました。
後年観た『デモンズ‘95(1994)も、噂に違わぬ傑作でした。
惚れこんで「Blu-rayを買おう!」と誓っておいて、
未だに買っていない怠け者。

2014816日「京都怪奇映画祭ナイト」
『帝都物語』(1986)→トークショー(嶋田久作)→『地獄』(1960)→『マタンゴ』(1963)
 
このANでは眼鏡を忘れる大失敗をやらかしてしまい、気づいた時は「もう嫌だ!綺麗に観れないなら帰りたい!」と思ったものの、いずれも大画面の迫力で魅せる映画だったので何とか楽しむことが出来ました(既に観ている映画たちだったのが救いでした)
『地獄』のタイトルバックは、デカデカと殴り書きのクレジットにストリップ風の映像と叫び声や荒ぶる音楽が乗っかるという、実に気〇いじみたものですが、みなみの大スクリーンでそれを観た時、お口あんぐりになってしまいました。こんな強烈な『地獄』は初めてだ!と、ボケた目でもハッキリ分かる映像の力でした。
このANは友人と行っていて、しばらくは田村役で出演していた沼田曜一のモノマネばかりしてました。
「接吻しろぉ!」とか「黙れぇ!」とかです。田村が出て来る時の異常な効果音(ビュウゥッ!と強い風の音のような)もマネしてました。バカですね~。
そして目玉は『マタンゴ』の上映。何故かと言うと、このANのために劇中で食べるキノコを和菓子屋さんに頼み、再現販売してもらったからなのです!
名付けて、マタンゴのきなこもち。
しかも中野昭慶特技監督がビデオメッセージで出演し、撮影時の思い出話を語ってくれるオマケつき。
みんな(僕らも)ゾロゾロ並んで購入し、映画の終盤、水野久美が「美味しいわぁ」と言いながらキノコをパクつき、それを見た土屋嘉男が美味しそうに食べるのに合わせて「カシャカシャ…」と一斉にフードパック(プラスチックのお惣菜入れるヤツ)を開く音が。そして各々、真夜中に甘~いきなこもちを頂いたのです。
「あそこまで一体感のあるシュールな映画体験は無いんじゃなかろうか、いや、無い!」と断言できるほど、面白いANでした。
 
 
2014920日「大人のための実相寺劇場 光と影そして、エロス」
『アリエッタ』(1989)→トークショー(古林浩一、堀内正美)→『ラ・ヴァルス』(1990)→『ディアローグ[對話]より堕落 ~ある人妻の追跡調査~(1992)『隣人』(1993)
 
悔やんでも悔やみきれないANと言えば、このANです。
実相寺監督はテレビや映画のみならずアダルトビデオも撮っていた人ですが、それらを上映するという珍しい企画で、ゲストには実相寺作品の常連であり『ラ・ヴァルス』『ディアローグ』に出演された堀内正美さんがいらっしゃいました。
当時、何故か僕は堀内さんとFacebook上で友達関係であり、このオールナイトの事も話題になって「サインの時間ではお声かけしますね!」とこちらから振っておいたクセに、当日になると委縮して声をかけられず遠くから眺めているだけ…という情けない結果になったのです。
加えて「貴重な機会だから絶対寝ないぞ!」と心に誓ったのに、部分的にとは言え4本中3本をうたた寝で完走(しっかり観たのは『アリエッタ』のみ)出来ず… タイムマシンで戻りたい出来事の一つです。
このチケットだけは、しっかりと手元に残しています。

20171223日「オーディナリーなライフにブリリアントな瞬間があるんだよナイト」
『パターソン』(2016)→『人生はビギナーズ』(2010)→『スモーク』(1995)
 
未見作品は『人生はビギナーズ』だけで、好きな映画たちを一気に観られる!といった気持ちで行ったのでした。
ところが軽やかな語り口の『人生~』に魅了され、マイク・ミルズ監督は忘れられない監督となりました。
京都シネマで初めて観た『パターソン』は「ジャームッシュの原点回帰」みたいな宣伝に期待し過ぎて「こんなもんかな」止まりでした。しかし大きなスクリーンで対峙する事で、映画に描かれる大小様々な出来事をしみじみと味わえて、だんだん好きな映画になっていきました。
『スモーク』は当時のフィルムで上映され、字幕の位置も現在の下側ではなく右側縦書き表示で何だか新鮮。
クリスマスが近い時期に、人生の甘いも酸いも描かれた映画たちに元気をもらえたANでした。
 
 
ザッと書き出すつもりが、結構な分量となってしまいました。しかし、これら以外にも「園子温ナイト」「映画監督・豊田利晃ナイト」「アリスメンタルジャーニーNight」「チミノの門を叩け!ナイト」(『ディア・ハンター』のフィルム上映はトラウマ)「片渕須直オールナイトin京都」「映画大好きナイト」「Start Me Up -イ・ク・ぜ!ナイト-」等、多くの忘れ難いANがありました。
映画は観るだけじゃなく、向かう道中の高揚感や休憩時間の過ごし方、帰り道の余韻を楽しむひとときなど、様々な時間が合わさって「映画を楽しむこと」なんだと、みなみ会館のANは教えてくれました。

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